解説記事

上司に出す「社内問い合わせAI」の説明の書き方(テンプレートつき)

上司や経営層への説明資料はA4一枚で足ります。現状、試すこと、期間と費用、判断の基準、やめる条件の5項目のテンプレートと例文、「手間が増えないか」と聞かれたときの答え方、数字がまだないときの書き方をまとめました。

2026年9月15日公開

A4一枚の資料を机に置いて上司に説明する担当者

上司や経営層に社内問い合わせAIの導入を説明する資料は、A4一枚で足ります。書くのは、今何に困っているか、何を試すか、期間と費用、続けるかを判断する基準、やめる条件の5つです。問い合わせの件数や時間の数字がまだなくても、「2週間記録してから報告する」と書けば資料になります。頼み方は、最初から全社導入の稟議にせず、無料か少額で期限を切って試す提案にします。

上司が知りたいのは4つだけです

分厚い資料の束を前に困っている担当者と、その横に置かれた1枚の紙

導入を提案しようとすると、資料は長くなりがちです。AIの仕組み、機能の一覧、他社の動き、効果の試算。書くほど安心できますが、上司はその大半を読みません。

上司が判断するときに知りたいのは、次の4つです。

  • 何に困っているのか
  • 何を試すのか
  • いくらかかるのか
  • うまくいかなかったらどうするのか

この4つに答えていれば、A4一枚で判断できます。機能の説明が多い資料は、かえって「AIを入れること自体が目的になっていないか」という疑いを招きます。資料に書かないことは、聞かれたときに口頭で答えます。

A4一枚のテンプレート

書く順番は、現状、試すこと、期間と費用、判断の基準、やめる条件です。上司の4つの問いに、上から順に答える並びです。各項目は2〜3行で足ります。

A4一枚の構成
  1. 1現状 何に困っているか問い合わせの件数、受けている担当者、多い質問
  2. 2試すこと 何を試すか社員が質問する場所、AIが答える範囲、答えられない質問の届き先
  3. 3期間と費用 いくらかかるか始める日と終わる日、費用、担当者の準備時間
  4. 4判断の基準 何を見て続けるか試す前と後で、同じ方法で数える件数と時間
  5. 5やめる条件 うまくいかなかったらやめる目安と、やめたときに費用が残らないこと

冒頭には「社内問い合わせAIの試用について」のような題名と、日付、所属、氏名を書きます。以下は、各項目に書くことと、そのまま使える例文です。【】は自社の状況に置き換えます。

現状

何に困っているかを、上司が知っている出来事で書きます。問い合わせの件数、誰が受けているか、どんな質問が多いかの3点です。件数の記録がなければ「○○のような質問が毎日来る」と書き、数字は記録してから足します。

多い質問の例には、答えが決まっているものを挙げます。経費精算の締め日を聞かれたらや有給休暇があと何日残っているか聞かれたらのような質問です。上司にも心当たりがある質問ほど、困りごとが伝わります。

総務と人事への社内の問い合わせは、【担当者2名】が通常の業務と並行して受けています。多いのは、経費精算の締め日や有給休暇の残日数のような、答えが決まっている質問です。件数は記録していないため、【9月16日から2週間】記録して報告します。

試すこと

何を、どの範囲で試すかを書きます。社員がどこから質問するか、AIが答える質問の範囲、AIが答えられないときに誰に届くかの3点です。対象の部署と質問の範囲を狭くしておくと、上司は「その範囲なら」と判断しやすくなります。

社員が普段使っているチャットから質問できるようにします。答えが決まっている質問にはAIが答え、答えられない質問は担当者に届く仕組みです。対象は【営業部】に限り、AIに答えさせる質問は【先月多かった10件】から始めます。

期間と費用

いつからいつまで試すか、費用はいくらかを書きます。無料で試せるなら「費用は0円」と書きます。担当者の準備にかかる時間も、見込みで書いておきます。あとから「思ったより手間がかかった」と言われないためです。

期間は【10月1日から2週間】です。費用は【無料のプランを使うため0円】です。準備として、回答の材料を10件そろえる作業に【合計約3時間】を見込んでいます。

判断の基準

何を見て「続ける」と判断するかを書きます。試す前と後で、同じ方法で記録した数字を比べます。担当者が自分で答えた件数、対応にかかった時間、社員がAIに聞いた回数の3つで足ります。

試用の前後で、担当者が自分で答えた件数と対応時間を、同じ方法で記録して比べます。社員がAIに質問した回数と、AIが答えられずに担当者に届いた件数もあわせて報告します。報告は【10月20日】に出します。

やめる条件

何が起きたらやめるかを、先に書きます。担当者の対応時間が減らない、社員が使わない、社内のルールに関わる質問で誤った答えが出た、などです。やめたときに費用が残らないことも書いておきます。

【2週間】たっても担当者の対応時間が減らない場合、または社員の利用が【週に10回】に届かない場合はやめます。無料のプランのため、やめても費用はかかりません。

5項目でA4の表面に収まらなければ、AIの仕組みの説明と他社の動きから削ります。

「手間が増えないか」と聞かれたときの答え方

上司の質問に、1枚の資料を手に落ち着いて答える担当者

資料を出すと、いちばん多く返ってくるのがこの質問です。「AIを入れて、かえって担当者の仕事が増えないか」という心配で、上司が担当者を気づかって聞いていることもあります。

答えは、試す仕組みの形で決まります。社員の質問をまずAIが受け、答えられなかったものだけが担当者に届く仕組みにします。この形なら、増える手間は届いた質問に答えることだけです。届いた質問に答えるのは、これまでもやっていた仕事です。

ただし、最初の準備と確認にかかる時間は正直に伝えます。そのうえで「試用の期間で数える」と答えます。届いた件数と対応時間を記録すれば、手間が増えたかどうかは印象ではなく数字で分かります。

社員の質問はまずAIが受け、答えられなかったものだけが私に届きます。増えるのは、届いた質問に答える手間だけです。最初の2週間は、回答の材料の準備と確認に【約3時間】かかります。その後は届いた件数と対応時間を記録し、手間が増えていないかを数字で報告します。

反対に、手間が本当に増える試し方もあります。AIの回答を、期限を決めずに担当者が毎回読んでから社員に返す形や、最初に社内FAQを大量に作り込む形です。資料の「試すこと」には、そうしない進め方を書いておきます。防ぎ方は、社内問い合わせにAIを入れると、担当者の手間は増える?にまとめています。

このほかに聞かれやすい質問と、答え方、資料のどこに書いておくかを並べます。

上司に聞かれやすい質問と答え方
答え方資料のどこに書いておくか
手間が増えないか増えるのは届いた質問に答える手間だけ。試用の期間で数える試すこと、判断の基準
いくらかかるか期限を切った試用の費用と、担当者の準備時間を言う期間と費用
効果はどう分かるのか試す前と後で、同じ方法で記録した件数と時間を比べる判断の基準
社員は使うのか普段使っているチャットから聞ける形にする。使った回数を報告する試すこと、判断の基準
AIが間違えたらどうする答えさせない話題を決める。回答の確認は最初の2週間だけと期限を切る試すこと
うまくいかなかったらやめる目安と、やめても費用が残らないことを先に書くやめる条件

数字がまだないときの書き方

数字がないことは、隠さずに書きます。「件数は記録していません。2週間記録してから報告します」で足ります。上司が知りたいのは正確な現状より、担当者が現状をつかむ段取りを持っているかどうかです。

現状の欄には、数字の代わりに出来事を書きます。「月初は経費精算の締め日の質問が続く」「4月は新入社員から会議室の予約方法を何度も聞かれる」のような書き方です。会議室の予約方法を聞かれたらは、上司自身が聞いたことのある質問かもしれません。

そのうえで、記録を始める日と報告する日を書きます。日付があると、上司は「では記録してから」と言えます。その返事で、話は一歩進んでいます。

問い合わせの件数と対応時間は、現在記録がありません。【9月16日から2週間】記録し、【10月2日】に件数、対応時間、答えが決まっている質問の割合を報告します。試用を始めるかどうかは、その報告を見てご判断ください。

記録の取り方と、報告に載せる4つの数字の出し方は、社内ヘルプデスクの導入効果を、上司にどう説明するかに書いています。

最初から全社導入の稟議にせず、期限を切った試用を頼みます

1枚の資料を読んだ上司がうなずき、担当者に返している

同じ内容でも、頼み方で通りやすさが変わります。通りやすいのは、無料か少額で、期限を切って試す提案です。最初から全社導入の稟議にはしません。

上司が判断する金額とリスクが小さいほど、決裁は早く済みます。試用なら、上司は「合わなければやめる」と言えるので承認しやすくなります。

頼む順番は、記録、試用、本導入の3段階です。

頼む順番
  1. 12週間記録することの了承をもらう費用はかからないので口頭で足りる
  2. 2A4一枚の資料で、試用の了承をもらう無料か少額で、期限を切る
  3. 3試用の数字をもとに本導入の稟議を出す判断の基準に書いた数字がそのまま根拠になる

稟議では、A4一枚に書いた「判断の基準」の数字がそのまま根拠になります。試用のときに数字の出し方を決めておいた分だけ、稟議の準備は短くて済みます。