解説記事

「これ、誰に聞けばいい?」が減らない会社に共通すること

社員は困りごとを部署の分担ではなく「引っ越した」のような出来事で考えます。担当表が部署名で書かれているなどの共通点と、出来事から引ける案内表の作り方、迷ったときに聞く窓口を1つにするときの決めごとをまとめました。

2026年9月14日公開

引っ越しの荷物を抱えて迷う社員に、担当者が手を振って声をかけている

「これ、誰に聞けばいいですか?」という質問が減らない会社では、たいてい担当の案内が部署の分担で書かれています。社員は「引っ越した」「子どもが生まれた」のような出来事で困るので、部署名の一覧を見ても自分の件がどこに当たるかわかりません。減らすには、出来事から引ける案内表を作ることと、迷ったときに聞く窓口を1つ決めることの両方が要ります。

誰に聞けばいいかわからない会社の共通点

壁に貼られた部署ごとの担当表を見て、首をかしげる社員

担当表が部署名と業務名で書かれている

社内ポータルに「総務部 備品・施設管理」「人事部 労務・社会保険」のような担当表が載っていても、社員はそれを見て判断できません。「社会保険」と「家族を扶養に入れる」が頭の中で結びつくのは、担当者だからです。

社員が知っているのは、自分に何が起きたかだけです。

部門をまたぐ手続きに、最初の受け手がいない

引っ越しを例にとると、住所の届け出と通勤手当の変更で担当が分かれている会社はよくあります。引っ越したときの手続きを聞かれたら通勤経路が変わったときの手続きを聞かれたらは、社員にとっては1つの出来事です。

どこか1か所に聞けば全体がわかる、という場所がないと、社員は部署を1つずつ当たることになります。途中で面倒になり、通勤手当の変更だけ出し忘れる、ということも起きます。

聞いた先で「それはうちじゃない」と言われたことがある

一度たらい回しにされた社員は、次から部署の窓口に聞かなくなります。代わりに、社内の事情に詳しい人に直接聞きに行きます。

その結果、特定の人に質問が集まります。聞かれた人は親切に答えますが、答えは記録に残らず、その人が休むと誰もわからなくなります。社員の側から見れば、詳しい人に聞くのが一番確実だったというだけのことです。

担当が変わっても、案内が更新されていない

異動や退職で担当者が変わったのに、ポータルの連絡先が前の人のまま、ということもよくあります。古い連絡先に一度当たった社員は、案内そのものを信用しなくなります。

出来事から引ける案内表を作る

部署ごとの担当表を捨てる必要はありません。社員向けに、出来事から引ける表を1枚足します。

困りごと・出来事 最初に連絡する先 一緒に必要になりやすい手続き
引っ越した 【人事の窓口】 通勤手当の変更、【住宅手当の変更】
結婚して名字が変わった 【人事の窓口】 給与や社会保険の登録内容の変更、【メールアドレスや名刺の変更】
子どもが生まれた 【人事の窓口】 家族を扶養に入れる手続き、産休・育休の相談
社員証をなくした 【総務の窓口】 【入館の一時的な手配】
会社のパソコンやスマホをなくした 【情シスの窓口】 【総務への紛失の届け出】
取引先から請求書が届いた 【経理の窓口】 【社内の承認手続き】

それぞれの答え方は、結婚などで名字が変わったときの手続きを聞かれたら家族を扶養に入れたいと言われたらパソコンやスマホをなくしたと言われたらにまとめています。

表を作るときは、次の3つに気をつけます。

  • 左の列は、社員が実際に使った言い方で書く。「住所変更」ではなく「引っ越した」
  • 連絡先は個人名ではなく、窓口のチャットや共有のメールアドレスにする。異動のたびに書き換えずにすむ
  • 並び順は部署ごとではなく、よく聞かれる順にする

左の列の言葉は、担当者が考えるより、社員に聞いたほうが早く集まります。過去のチャットやメールの書き出しを見返すと、社員がどう言って聞いてきたかがそのまま残っています。

部署ごとの担当表と、出来事から引ける案内表
部署ごとの担当表出来事から引ける案内表
見出しの言葉「人事部 労務・社会保険」「引っ越した」「子どもが生まれた」
連絡先異動のあと前の人のままになりやすい窓口のチャットや共有のメールアドレス
並び順部署ごとよく聞かれる順

迷ったときに聞く窓口を1つ決める

窓口の担当者が社員の質問を受け、担当の部署に電話でつないでいる

案内表を作っても、表にない出来事は必ず起きます。そのときに「迷ったらここ」と言える窓口を1つ決めておきます。総務が受けることが多いですが、どの部署でもかまいません。

社員が困ったときの聞き先
困りごとが案内表に載っているか
  • はい
    表の「最初に連絡する先」に連絡する
  • いいえ
    迷ったときに聞く窓口に送る

窓口を決めるときは、次のことも一緒に決めます。

  1. 受けた人は、自分で答えられなくても、担当の部署を調べて伝えるところまでやる
  2. 担当の部署に回したら、回したことを社員に伝える
  3. 回された部署は、【翌営業日中】に社員へ返事をする
  4. 回した件は記録しておき、月に1回、案内表に足す
迷ったときの窓口で受けてから返事までの流れ
  1. 1窓口答えられなければ担当の部署を調べて伝える
  2. 2窓口担当の部署に回したことを社員に伝える
  3. 3担当の部署社員へ返事をする【翌営業日中】
  4. 4窓口回した件の記録を案内表に足す月に1回

2番目を省くと、社員は「伝わったのかわからない」と感じて、同じことを別の人にも聞きます。回すときの返信は、次のように書けます。

この件は【経理部の請求書担当】が受けています。こちらから内容を伝えましたので、【翌営業日中】に【担当者名】から連絡があります。連絡がなければ、このチャットでもう一度お知らせください。

窓口を1つにすると、最初に受ける人の手間は増えます。とくに始めてからしばらくは、案内表にない質問が多く、振り分け先を調べる時間がかかります。その人の本来の業務を少し減らすか、振り分けにかけてよい時間を上司と決めておかないと、窓口役が続きません。

窓口と案内表を、社員に知ってもらう

案内表と窓口を作っても、社員が知らなければ、これまでどおり詳しい人に聞きに行きます。案内は一度で終わらせず、次の場面で繰り返します。

  • 全社への案内。メールだけでなく、社員が普段見ているチャットのチャンネルにも置く
  • 入社したときと、異動したときの案内資料に入れる
  • 問い合わせに答えたとき、返信の最後に案内表のリンクを付ける

全社に知らせる文面は、次のように書けます。

手続きや社内のルールで、どこに聞けばいいかわからないときは、【総務の問い合わせチャット】に送ってください。担当の部署がわからなくてもかまいません。こちらで確認して、担当から連絡するか、答えをお返しします。よく聞かれる出来事ごとの連絡先は【案内表のリンク】にまとめています。

「担当の部署がわからなくてもかまいません」の一文は必ず入れます。社員が聞く前に迷っているのは、どの部署に聞けばいいかだからです。

詳しい人に集まっている質問を、窓口に移す

社内の事情に詳しい社員が質問に答え、次からの聞き先をノートPCで示している

窓口を決めたあとも、しばらくは詳しい人に質問が行きます。無理に止めるより、その人に協力してもらいます。

聞かれた人には、答えたあとに「次からは【総務の問い合わせチャット】でも聞けます」と一言添えてもらいます。あわせて、週に1回、どんな質問を受けたかを窓口役に教えてもらいます。これで、これまで記録に残らなかった質問が案内表の材料になります。詳しい人の負担も、少しずつ窓口に移っていきます。

振り分けた件から、案内表を直していく

振り分けの記録は、案内表を直す材料になります。月に1回、次の3つを見ます。

  • 同じ出来事で2回以上振り分けた件があれば、案内表に行を足す
  • 振り分け先を間違えた件があれば、「最初に連絡する先」を直す
  • どの部署も担当していなかった件があれば、担当を決める場に持ち込む

3つめは案内の問題ではなく、社内の分担の問題です。「誰に聞けばいい?」が減らない理由をたどると、誰も担当していなかった、ということがあります。たとえば在宅勤務の日の通勤手当を人事と経理のどちらが決めるのか、自分のスマホで会社のメールを見たいと言われたら情シスと総務のどちらが答えるのか、はっきりしていない会社もあります。

表に行が増えるほど、窓口役が振り分けに迷う件は減ります。案内表を作った人が1人で抱えず、振り分けた先の部署にも表を見てもらい、言葉や連絡先の間違いを直してもらいます。

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