同じ質問が何度も来るとき、総務がまずやるのは、回答を書くことではなく数えることです。2週間、どの質問が何回来たかを記録すると、繰り返しの中心になっている質問が見えてきます。そのうえで、同じ質問が来る原因を「案内が届いていない」「案内が見つからない」「手続き自体がわかりにくい」「人によって答えが変わる」の4つに分けます。原因によって打つ手が違うからです。
まず2週間、質問を数える
「また同じことを聞かれた」という感覚は、あまりあてになりません。印象に残るのは、忙しいときに聞かれた質問や、全社に案内したばかりの質問だからです。
記録は次の表で足ります。問い合わせが来るたびに1行書きます。
| 日付 | 社員の言い方 | 質問の要約 | 手段 | 対応時間 |
|---|---|---|---|---|
| 【9/1】 | 経費っていつまでに出せばいいですか | 経費精算の締め日 | チャット | 【○分】 |
| 【9/1】 | ログインできなくなりました | パスワードの再設定 | 電話 | 【○分】 |
| 【9/2】 | 健康診断っていつですか | 健康診断の日程 | 口頭 | 【○分】 |
「社員の言い方」の列は省かずに書きます。あとで案内やFAQを書き直すとき、社員が実際に使う言葉をそのまま使えます。
2週間たったら、「質問の要約」ごとに件数を数え、多い順に並べます。上位10件を見れば、何から手をつけるかが決まります。
同じ質問が来る原因を4つに分ける
上位の質問それぞれについて、なぜ繰り返し来るのかを考えます。見分け方は次のとおりです。
- はい案内が届いていない。案内する場所と回数を増やす
- いいえ案内ページのリンクを送れば済んでいるか
- はい案内が見つからない。見出しと本文を社員の言葉に直す
- いいえ案内を読んだうえで「何を書けば」と聞いてくるか
- はい手続き自体がわかりにくい。手続きを変える
- いいえ人によって答えが変わる。答え方の基準を書き出す
- はい
- はい
1つの質問に原因が2つ重なっていることもあります。その場合は、図の上の問いから順に手を打ちます。案内が届いていないうちに手続きを変えても、変えたこと自体が伝わらないからです。
案内が届いていない
健康診断の日程や年末調整の書類の配布など、時期が決まっている案内で起きやすい原因です。全社メールは、ほかのメールに埋もれて読まれないまま流れていきます。
打つ手は、案内の回数と場所を増やすことです。1回のメールで終わらせず、期限の1週間前と前日にも知らせます。社員が普段見ているチャットのチャンネルにも同じ内容を置きます。健康診断の日程や受け方を聞かれたらのように、聞かれたときに返す文面も用意しておきます。
案内が見つからない
答えるたびに同じページのリンクを送っているなら、ページはあるのに見つけてもらえていません。見出しが「経費精算規程」で、社員は「経費 いつまで」で探している、というずれがよくある形です。
見出しを社員の言い方に変え、ページの一番上に答えを書きます。締め日の答え方は経費精算の締め日を聞かれたらに文面ごとまとめています。
手続き自体がわかりにくい
案内を読んだうえで「この欄には何を書けばいいですか」と聞かれるなら、案内ではなく手続きの問題です。書式の欄が多い、記入例がない、どのシステムから申請するのかわからない、といったことが原因になります。
この場合、案内を書き直しても質問は減りません。記入例を1枚付ける、使っていない欄を消すなど、手続きのほうを変えます。自分の部署だけで変えられないときは、記録した件数を添えて相談すると、話が具体的になります。
人によって答えが変わる
「この場合も経費になりますか」「在宅勤務の日も通勤手当は出ますか」のように、状況を聞かないと答えられない質問です。件数が多くても、案内1枚では答えきれません。
まず、担当者が普段どういう基準で答えているかを書き出します。よくある状況をいくつかに分けてそれぞれの答えを案内に載せ、それ以外は担当者が受ける、と線を引きます。担当者によって答えが違っていたとわかるのも、この作業でよくあることです。取引先との会食代を経費にできるか聞かれたらは、この種類の質問の一例です。
- 1普段どういう基準で答えているかを書き出す
- 2よくある状況をいくつかに分ける
- 3状況ごとの答えを案内に載せる
- 4それ以外は担当者が受ける
答えるたびに使える返信文を用意しておく
原因への手当てには時間がかかります。そのあいだも質問は来るので、上位の質問には返信文を用意しておきます。返信文には、答えと一緒に、次に社員が自分で調べられる場所を入れます。
経費精算の締め日を聞かれたときの文例です。
経費精算は【毎月○日】までに、前月分を【経費精算システム名】から申請してください。締め日などは【社内ポータルの経費精算のページ】にまとめています。
パスワードを忘れたと言われたときの文例です。
パスワードの再設定は【ログイン画面の「パスワードを忘れた場合」】からできます。うまくいかないときは、【社員番号】を添えて【情シスの窓口】に連絡してください。
パスワードの質問への答え方は、パスワードを忘れたと言われたらに詳しく書いています。
返信文は、担当者が複数いるなら共有の場所に置きます。人によって答え方が変わると、社員は答えやすそうな人を選んで聞くようになり、質問が特定の人に偏ります。
時期によって増える質問は、年間の表にしておく
毎年同じ時期に同じ質問が増えるなら、その前に案内を出せば件数を抑えられます。2週間の記録とは別に、1年分の予定を表にしておきます。時期は会社によって違うので、【】を自社の予定で埋めます。
| 時期 | 増えやすい質問 | 前もってやること |
|---|---|---|
| 【入社の時期】 | パスワード、パソコンの設定、経費精算のやり方 | 入社の案内資料に、よく聞かれる質問と答えを入れる |
| 【異動の時期】 | 通勤経路の変更、引っ越しの手続き | 異動の内示のあとに、手続きの一覧を送る |
| 【健康診断の時期】 | 日程、受けられなかったときの扱い | 日程の案内を、1週間前と前日にも出す |
| 【年末調整の書類を配る時期】 | 書類の書き方、提出の期限 | 書き方の案内を書類と一緒に配る |
この表は、翌年の担当者への引き継ぎにもそのまま使えます。どの時期に何を聞かれたかは、担当者が変わると真っ先に失われる情報です。
やらないほうがよいこと
- 「前にも案内しました」と返す。社員は次から聞きにくくなり、詳しい同僚に聞くようになります。その同僚の答えが古いこともあります
- 社内報や全社メールに一度載せて終わりにする。載せたことと、読まれたことは別です
- 上位10件を飛ばして、すべての質問のFAQを作ろうとする。作業が終わらず、よく来る質問への手当てが後回しになります
1か月後にもう一度数える
手を打ってから1か月たったら、最初と同じ表でもう2週間記録します。上位10件の件数が減っていれば、その手当ては効いています。
減っていない質問は、原因の見立てが違っていた可能性があります。原因の見分け方の図に戻り、もう一度当てはめます。比べるときは時期にも気をつけます。年末調整や新入社員の入社のように時期によって増える質問は、1か月後の数字だけでは判断できません。前の年の同じ時期の記録があれば、それと比べます。
- 1質問が来るたびに1行書く2週間
- 2件数の多い上位10件を選ぶ
- 3原因を4つに分けて手を打つ
- 4同じ表でもう2週間記録する1か月後
- 5減っていない質問は見分け方を当てはめ直す
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