社内問い合わせAIを無料で始める道は、無料プラン、試用期間、今あるチャットツールの付属機能、自作の4つです。無料の範囲は、月にAIが答えられる回数か、使える期間のどちらかで区切られています。無料のうちにやることは、使ってみた感想を集めることではなく、質問の件数とAIが答えられた件数を数えて残すことです。社内の規程や手順書を渡す前に、個人情報を含む資料をどこまで出すかも決めておきます。稟議に持っていけるのは、無料のうちに残したこの数字です。
無料で始める道は4つあり、無料の理由がそれぞれ違います
無料と書いてあっても、何が無料なのかは4つに分かれます。始める前に、自分が使おうとしているのがどれかを確かめます。
| 始め方 | 無料の範囲 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 無料プラン | 期限はなく、月の回数や機能に上限がある | 質問の多い部門だけで、長く試したいとき |
| 試用期間 | 30日などの期限つきで、有料と同じ機能が使える | 有料にする前提で、本番と同じ条件を見たいとき |
| 今あるツールの付属機能 | 契約中のチャットツールやグループウェアに含まれる | 追加の契約をせずに、まず社内に慣れてもらうとき |
| 自作 | 作る時間は自社負担。AIの利用料は使った分だけかかる | 情シスの手が空いていて、社内の資料が整っているとき |
自作だけは、無料の意味が他の3つと違います。作る道具の料金はかからなくても、AIに質問を投げるたびに利用料がかかり、作る時間と直す時間は担当者の仕事として残ります。質問が月に何百件も来る会社では、自作の維持に情シスが毎月何日かを使うことになります。
最初に試すのは、無料プランか試用期間のどちらかにします。この2つは、社員に見える形で1つの窓口に質問を集められるので、件数を数える目的に合います。
無料の回数は、答えが1つに決まる質問に使います
無料で使える回数は多くありません。月に数十回であれば、社内の質問すべてを流すと数日で上限に達します。最初に流すのは、答えが1つに決まっていて、繰り返し来る質問に絞ります。
具体的には、パスワードを忘れたと言われたらや経費精算の締め日を聞かれたら、有給休暇の申請方法を聞かれたらのように、規程や手順書を見れば答えが書いてある質問です。この種類の質問は、担当者が毎回同じ文面を返しているので、AIの答えが合っているかどうかも読んだ瞬間に判断できます。
反対に、無料のうちに流さないほうがよい質問もあります。社員一人ひとりの事情で答えが変わる相談、給与や評価の金額に踏み込む質問、社外に出せない契約の内容です。これらは答えの正しさを確かめるのに時間がかかり、限られた回数の使い道として合いません。
社内の資料を渡す前に、個人情報の扱いを決めます
AIに答えさせるには、規程や手順書、FAQを読ませます。この資料に社員の氏名や連絡先が入っていると、個人データの取扱いを外の会社に任せることになります。
個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)には、委託の意味が書いてあります。契約の形態や種類を問わず、他の者に個人データの取扱いを行わせることが委託にあたります。無料で試している間も同じです。法第25条は、委託する場合に委託先への必要かつ適切な監督を行わなければならないと定めています。ガイドラインが挙げる措置は、適切な委託先の選定、委託契約の締結、委託先における個人データ取扱状況の把握の3つです。
無料の申し込みは画面上の操作だけで済むので、この3つを飛ばしたまま資料を渡してしまうことがあります。先に資料の中身を見て、社員の氏名や連絡先が入っている部分を外してから渡せば、無料のうちは委託にあたる資料を出さずに試せます。
- はいその部分を外しても質問に答えられるか
- はい外してから渡し、本契約までに委託の手続きを進める
- いいえ委託先の選定と契約を済ませてから渡す
- はい
- いいえ社外に出せない契約や取引の内容が入っているか
- はいその資料は渡さず、規程と手順書だけで試す
- いいえそのまま渡して試す
- はい
IPAの「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」は、15個の確認項目をチェックシートにまとめています。項目は、選ぶとき、運用するとき、セキュリティ管理の3つに分かれています。無料で試すときにも関わるのは、次の5つです。
- 取扱う情報の重要度を確認する
- 利用者の範囲を決める
- 利用者の認証を厳格に行う
- 利用終了時のデータを確保する
- データ保存先の地理的所在地を確認する
中でも利用終了時のデータの扱いは、無料をやめるときに効いてきます。試すのをやめたら渡した資料がどうなるかを、始める前に聞いておきます。
無料のうちに数える数字は3つです
無料の期間に集めるのは、感想ではなく数字です。次の3つを数えます。
- 月に来た質問の件数。AIに流した分と、担当者に直接来た分を分けて数えます
- AIが答えた件数。そのうち、担当者が読んで「このまま社員に返してよい」と言える答えが何件かも数えます
- 担当者に回ってきた件数。AIが答えられなかった質問は、どの種類が多いかも書き留めます
この3つがあると、有料にするときの見積もりが自分で作れます。月の質問件数からは、回答回数で料金が決まる製品のどの段階に入るかが分かります。AIが答えられた割合からは、社員に案内してよいかどうかが判断できます。担当者に回った質問の種類からは、次にどの資料を足せばよいかが分かります。
- 1担当者繰り返し来る質問を10個選び、答えのもとになる資料を渡す
- 2担当者試す部門と期間を決めて、社員に窓口を案内する1部門20人ほどから始める
- 3社員普段の質問をAIに送る
- 4担当者AIの答えを毎日読み、そのまま返せるかを○×で記録する
- 5担当者2週間分の3つの数字をまとめ、上限に達した日を確かめる
答えの正しさは、担当者が読んで確かめます。社員に「役に立ちましたか」と聞いて回る必要はありません。毎日10分、前日の答えを読んで○×を付ければ、2週間で100件前後の判断がたまります。
有料に切り替える前に、上限と解約とデータの持ち出しを聞きます
無料から有料に移る前に、次の5つを相手に聞きます。そのまま送れる文にしてあります。
- 「無料の範囲はいつまでですか。期限や上限に達したあと、自動で有料に切り替わりますか」
- 「上限に達したとき、社員の画面には何が表示されますか。返事がないまま終わりますか」
- 「無料で使った資料と質問の記録は、有料に切り替えたあとも引き継げますか」
- 「契約をやめたとき、渡した資料と質問の記録はどうなりますか。消す手続きと時期を教えてください」
- 「無料で使えた機能のうち、有料プランにすると使えなくなるものはありますか」
3番と4番は、無料のうちに聞いておきます。試した結果を引き継げない製品では、有料にしてからもう一度資料を渡す作業が発生します。やめるときのデータの扱いも、IPAのチェックシートが挙げている確認項目です。
社内の稟議に出すのは、2週間で数えた3つの数字と、この5つの回答です。機能の一覧を並べるより、自社の質問が月に何件来て、そのうち何件にAIが答えられたかのほうが、責任者には判断しやすい材料になります。
例として、バックオフィスAIエージェントの無料の範囲を見ておきます。株式会社AutomagicaのカリスマAIには、月額0円でAIの回答が月50回までのフリープランがあります。Microsoft Teams、LINE WORKS、Google Chatから使え、AIが答えられない質問は担当者に届きます。
