解説記事

導入前2週間の問い合わせ記録シート

社内問い合わせAIを試す前の2週間は、社員が書いた質問文、答えの出どころ、入口、部署を1件ずつ記録します。シートの列、2週間後の名寄せ、試用で使うテスト質問20問の選び方をまとめました。

2026年10月26日公開

社員から聞かれた質問を、その言葉のまま一覧に書き写す担当者

社内問い合わせAIや新しい窓口を試す前の2週間は、問い合わせ1件ごとに、社員が書いた質問文、答えの出どころ、聞いてきた入口、社員の部署の4つを記録します。狙いは忙しさを測ることではなく、あとで前後を比べる基準と、AIに読ませる文書の優先順位と、試用で確かめるテスト質問をまとめて作ることです。列は7つで足り、1件の記入は30秒ほどで終わります。2週間で30件たまれば、試用の合否を自分で判定できます。

記録シートの3つの使い道

受けた問い合わせを、社員の言葉のまま一覧に書き写す担当者

導入前の記録は、あとで3か所で使います。

  1. 比べる基準。導入後に同じ列で2週間記録すると、件数と内容の変わり方が並べられる
  2. 読ませる文書の材料。社員の言い回しと、答えが書いてある文書の場所が一覧になる
  3. 試用の合否の判定。実際に来た質問をそのままAIに聞けば、自社で使えるかが分かる

3つめのために記録を取る会社は多くありません。試用を始めてから質問を考えると、担当者が思いついた言い方で聞くことになり、社員の言い方では試せません。「有給の残り何日ですか」と社員が書くところを、担当者は「有給休暇の残日数を教えてください」と聞いてしまいます。前者で答えられるかが、実際に使えるかどうかの分かれ目になります。

対応にかかっている時間まで出したいときは、社内問い合わせ対応にかかっている時間の測り方の時刻の列を足します。上司に効果を説明する予定があるなら、社内ヘルプデスクの導入効果を、上司にどう説明するかで先に報告の形を決めてから、列を決めます。

シートの列

スプレッドシートを1枚作り、窓口の担当者全員が同じシートに書きます。列は次の7つです。

列 必須か 書き方 記入例
受付日 必須 年月日 2026/11/4
入口 必須 チャット、電話、メール、対面から選ぶ チャット
部署 必須 聞いてきた社員の部署か拠点 大阪営業所
質問文 必須 社員が書いた言葉のまま写す 有給あと何日残ってますか
答えの出どころ 必須 答えが書いてある文書の名前と箇所。なければ「どこにも書いていない」 就業規則 第38条
答え方 必須 その場で答えた、調べて答えた、他の人に確認したから選ぶ 調べて答えた
対応時間(分) 任意 時間も測るときだけ 5

入口、答えの出どころ、答え方の列はプルダウンにします。選択肢を決めておくと、書く手間が減り、2週間後に集計するときに表記がそろいます。

質問文は言い換えずに写す

質問文の列だけは、きれいな日本語に直さずに写します。社員が書いた「パスワード分からなくなった」「ロックされた」「ログインできない」は、担当者から見れば同じ問い合わせですが、AIにとっては別の文です。この3つがそろって記録に残っていれば、試用のときに3通りで聞けます。担当者が「パスワードの再設定方法」と1つにまとめてしまうと、言い方の幅が消えます。

電話や立ち話で受けた質問は、社員が言った言葉を思い出せるうちに書きます。パスワードを忘れたと言われたらのような頻度の高い質問は、同じ内容でも言い方が毎回違うので、言い方ごとに1行として残します。

答えの出どころは文書名と箇所まで書く

「就業規則 第38条」「経費精算マニュアル 3ページ」「前任者のメールの控え」のように、どこを見て答えたかを書きます。思い出して答えた場合は「どこにも書いていない」を選びます。

この列は、AIやFAQに何から読ませるかを決めるために使います。出どころが同じ文書に集まっていれば、その文書を先に渡します。「どこにも書いていない」が多い質問は、読ませる文書がないので、先に文章を作るところからになります。文書がない状態でAIを入れても答えられません。この順番は社内FAQが読まれない理由と、作り込まずに始める方法でも同じです。

2週間の記録から試用までの流れ
  1. 1シートを作り、プルダウンの選択肢を決める目安30分始める前の日
  2. 2受けたら質問文と入口をすぐ書く残りの列は答え終わってから。1件30秒1日目から
  3. 3電話と立ち話の書き漏れを埋める5分毎日、終業の前
  4. 4同じ質問を名寄せして件数を出す1時間2週間の翌日
  5. 5件数の多い質問から回答文例を書く名寄せのあと
  6. 6テスト質問20問を選び、試用で同じ順に聞く試用の前

2週間をいつにするか

記録する2週間には、経費精算や勤怠の締め日を入れます。締め日の前後は問い合わせが増え、内容も偏るので、その山を含めないと導入後と比べられません。経費精算の締め日を聞かれたらのような締め日前の質問は、1日に何件も重なります。

年末調整や入社の時期は、ふだんの2週間とは件数が違います。この時期にしか来ない質問を混ぜると、年間の見積もりがずれるので、別の期間として分けて記録します。問い合わせが週に10件に届かない会社は、2週間を4週間に延ばします。試用のテスト質問を選ぶには、名寄せしたあとで20行ほど必要になります。

書いてよいこと、書かないこと

シートに書く前に、質問文の中の個人の事情を消している担当者

記録には、社員の名前、口座番号、病名、家庭の事情を書きません。社員が本人の事情を書いて聞いてきた質問は、聞かれたことだけを残します。「母の介護で週2日休みたいが有給は足りるか」は、「介護のために休むとき、有給休暇と介護休暇のどちらを使うか」と書き換えます。

シートを見られる人も決めておきます。窓口の担当者だけが開ける場所に置き、集計した表だけを上司に見せる形にすると、書くときに手が止まりません。

質問文をそのまま書いてよいかの判断
質問文に名前や口座番号、病気や家庭の事情が入っているか
  • はい
    その部分を消すと、何を聞かれたのか分からなくなるか
    • はい
      聞かれた内容だけを、一般の言い方に書き換えて残す
    • いいえ
      その部分だけ消して、残りは社員の言葉のまま写す
  • いいえ
    社員が書いた文のまま写す

2週間後にやる3つの作業

1. 同じ質問をまとめる

質問文を見比べて、同じことを聞いている行を1つにまとめます。このとき、言い回しは消さずに別の列へ全部並べます。「有給あと何日」「有休の残り」「有給休暇 残日数」は1つの質問にまとめ、言い回しの列に3つとも書きます。残日数の答え方は有給休暇があと何日残っているか聞かれたらにまとめています。

2. 次にやることを決める

名寄せした表に、件数と答えの出どころを並べます。この2つで、次にやることが決まります。

件数と出どころから、次にやることを決める
答えの出どころがあるどこにも書いていない
件数が多い回答文例を書き、AIに読ませる答えを決める部署と文章を先に作る
件数が少ない担当者が今までどおり答える聞かれたときに決める
本人の情報が要る担当者が答え、調べ方だけ文書にする担当者が答える

出どころがあって件数が多い質問は、文例を書けばその日から減ります。引っ越したときの手続きを聞かれたらのような、手順が決まっている質問がここに入ります。

3. テスト質問を20問選ぶ

試用のときに聞く質問を、記録から先に選びます。内訳は次のとおりです。

  • 件数の多い質問から10問。社員の言い回しのまま使う
  • 同じ質問の違う言い方から5問。1つの質問について3通りで聞ける形にする
  • 「どこにも書いていない」質問から3問。答えられないときに担当者へ渡るかを見る
  • 取り違えやすい2問。「経費精算の締め日」と「振り込まれる日」のように、似ていて答えが違うもの

20問は紙かシートに書き出し、試用の初日と最終日に同じ順で聞きます。合否の見方も先に決めます。出どころがある15問のうち何問に正しく答えられたか、出どころのない3問で「分かりません」と担当者に渡ったか、取り違えやすい2問を区別できたかの3つで判定します。答えられなかった質問は、AIの出来ではなく読ませた文書の不足であることが多いので、文書を直してもう一度聞きます。

記録が続かないとき

2週間の途中でシートが止まる原因は、だいたい列の多さです。途中で「緊急度」「解決したか」のような列を足したくなりますが、足すと記入が30秒で終わらなくなります。足すのは2回目の記録からにします。

  • 電話と立ち話は付箋に質問文だけ書き、終業前にシートへ写す
  • 担当者が複数いても、シートは1枚にまとめる
  • 5分で終わった質問も書く。短い質問の数が、AIに任せられる割合に直結する
  • 書き漏れた日があっても続ける。2週間そろわなくても、質問文が30件あればテスト質問は選べる

記録シートに集めた質問は、そのままバックオフィスAIエージェントの試験に使えます。株式会社AutomagicaのカリスマAIは Microsoft Teams、LINE WORKS、Google Chat で使えて、答えられない質問は担当者に届きます。フリープランは月額0円で、AIの回答は月50回までです。