社内問い合わせAIを提案されたら、機能の一覧ではなく5つの基準で確かめます。始めるまでに用意するナレッジの量、社員がいつものチャットで聞けるか、答えられないときの担当者への引き継ぎ、料金の上限の決まり方、会社のアカウントでのログインと部門ごとの権限です。どれも、提案してきた相手に1〜2問聞けば分かります。デモ画面の見た目より、この5つが導入後に使われ続けるかを決めます。
提案を受けたら、デモの見た目より5つの基準で見ます
営業や取引先からの提案は、たいていデモから始まります。質問を打つとAIがすらすら答える画面は、どの製品でも同じように見えます。違いが出るのは導入後で、ナレッジの準備が終わらない、社員が使わない、AIが答えられない質問が宙に浮く、といった形で表れます。
総務や情シスを兼ねている担当者が確かめたいのは、その導入後の姿です。専門知識がなくても、次の5つを順に聞けば、提案の中身をだいたい見きわめられます。AIが答えるときの元になる回答文やFAQのデータを、以下ではナレッジと呼びます。
基準1. ナレッジをどれだけ用意すれば動き始めるか
いちばん多いつまずきは、ナレッジの準備が終わらないことです。「規程集や手順書を全部整理してから」と考えると、普段の問い合わせに答えながら数百件の回答を書くことになり、試用期間が先に終わります。
見るのは、少ない材料で動き始められるかです。確かめることは2つあります。1つは、先月来た問い合わせから答えが決まっている質問を10件ほど選び、回答文例を書いて渡せば始められるかどうかです。パスワードを忘れたと言われたらや会議室の予約方法を聞かれたらのような質問です。もう1つは、今ある問い合わせのメールやチャットのログ、社内FAQのファイルを、整えずにそのまま渡して読み込めるかどうかです。この2つで、始めるまでの重さが決まります。
- はいログを渡して、AIが答えられた割合を試用で確かめる
- いいえ回答文例を10件ほど書けば始められるか
- はい先月多かった質問から10件書いて始める
- いいえ準備が試用期間内に終わるか、日数を出してもらう
- はい
「導入時に専任の担当者が御社のナレッジを作ります」という提案なら、その作業が有料か、社内の誰が何時間付き合うのかまで聞きます。作ってもらったナレッジは、社内のルールが変わるたびに誰かが直します。直す人が社内にいない前提の提案は、半年後に古い答えを返し始めます。
「先月来た問い合わせから回答文例を10件作ったら、そこから始められますか」 「今ある問い合わせのログや社内FAQのファイルを、整えずにそのまま渡して読み込めますか」
基準2. 社員がいつも使っているチャットで聞けるか
社員が質問するために別のサイトを開き、別のIDでログインする仕組みは、拠点が複数ある会社ではまず使われません。工場や店舗の社員はパソコンの前にいる時間が短く、スマホのチャットで済むことしかしないからです。使われなければ、担当者への電話とメールはそのまま残ります。
見るのは、自社で使っているチャットの中で質問と回答が完結するかです。Microsoft Teams、LINE WORKS、Google Chat には、外部のアプリやBotを追加する仕組みがそれぞれあります。Teams ではアプリをチャットやチャネルに追加でき、管理者は Teams 管理センターでアプリを許可したりブロックしたりします。Google Chat では、アプリを1対1のチャットやスペースに追加できます。LINE WORKS では、管理者画面から Bot を追加し、使用権限と公開範囲を設定します。提案された製品がこの仕組みに乗っているなら、社員はいつもの画面で聞けます。Slack を使っている会社も、同じことを聞きます。
情シスの手間も確かめます。管理センターや管理者画面でアプリを許可する作業は、たいてい情シスの管理者にしかできません。誰が何をすれば社員の画面に出るのかを、提案してきた相手に説明してもらいます。チャットで受ける場所の決め方や記録の残し方は、TeamsやLINE WORKSで社内問い合わせを受けるときに決めておくことにまとめています。
「うちは【Teams】を使っています。社員は【Teams】の画面の中で質問して、答えを受け取れますか。別のサイトやアプリは要りますか」 「情シス側で、管理画面からアプリを許可する作業は何が要りますか」
基準3. AIが答えられないとき、社員が放置されないか
AIが答えられない質問は必ず出ます。問題は、そのとき社員がどうなるかです。「わかりません」で会話が終わり、社員が結局メールで担当者に聞き直す仕組みだと、窓口が1つ増えただけになります。担当者は「AIに何を聞いて、何と返ってきたのか」を聞き直すことになり、手間はむしろ増えます。
見るのは3つです。1つ目は、答えられなかった質問が担当者に届くことです。2つ目は、社員が別の窓口に書き直さなくてよいことです。3つ目は、担当者が答えた内容を、次に同じ質問が来たときにAIが答えに使えることです。3つ目がないと、担当者はいつまでも同じ質問に手で答え続けます。
- 1社員いつものチャットでAIに聞く
- 2社員AIが答えられないと返ってくる
- 3担当者質問とAIのやりとりが担当者に届く
- 4担当者担当者が社員に答える
- 5担当者その答えをナレッジに足す
- 6社員次に同じ質問が来たらAIが答える
引き継ぎが要る質問には、人が動かないと解決しないものも含まれます。共有フォルダが開けないと言われたらのような質問は、AIが申請の手順を案内できても、権限を付けるのは情シスです。こうした質問が担当者にどう届き、その間に社員の画面には何が出ているのかを、デモで実際に見せてもらいます。
「AIが答えられなかった質問は、誰にどんな形で届きますか。社員は別の窓口に同じ内容を書き直す必要がありますか」 「担当者が答えた内容は、次に同じ質問が来たときにAIの答えに使われますか」
基準4. 料金の上限が何で決まるか
料金は月額の数字だけを見ると、社員数が増えたときに読み違えます。決まり方はおもに3つあります。1つ目は社員1人あたりで数える人数課金で、提案書では「ユーザー数課金」や「ID課金」と書かれます。2つ目はAIが答えた回数で数える回答回数の上限、3つ目は初期費用の有無です。
人数課金は、質問しない社員の分も払います。社員が500人から2,000人に増えれば、単価が同じなら月額も4倍です。回答回数の上限で決まる料金は、実際に使われた分に近い払い方ですが、上限を超えたときにAIの回答が止まるのか、追加料金なのかで運用が変わります。初期費用には、ナレッジづくりや設定の代行が含まれていることが多いので、何が含まれ、何が別料金かを見ます。
比べるときは、今の社員数と3年後の社員数の2つで見積もりを出してもらいます。拠点が増える予定があるなら、その分も入れます。無料で始められる製品なら、基準1から3を実際に確かめてから有料の見積もりを取れます。
「社員が【2,000人】になったら、月額はいくらになりますか」 「上限を超えたら、AIの回答が止まりますか。それとも追加料金ですか。初期費用には何が含まれますか」
基準5. 会社のアカウントで入れて、部門ごとに見せる範囲を分けられるか
問い合わせAIのために別のIDとパスワードを配ると、「パスワードを忘れた」という問い合わせが1種類増えます。退職した社員のアカウントを消す作業も1つ増えます。会社で使っているMicrosoftやGoogleのアカウントでそのまま入れるかどうかは、情シスの負担を左右します。
見せる範囲も確かめます。人事にしか答えさせたくない給与や評価の話、拠点ごとに違う規程、経理だけが知っていればよい取引先の情報など、全社員に同じ答えを返してはいけないナレッジがあります。部門や拠点ごとにAIが参照するナレッジを分けられるか、引き継ぎ先の担当者を部門ごとに変えられるか、の2つを確かめます。この2つがないと、ナレッジに載せられるのは全社共通の内容だけになります。
「会社の【Microsoft 365】のアカウントでログインできますか。別のIDとパスワードは要りますか」 「人事だけに見せたい回答を、ほかの部門の社員には出さない設定ができますか」
5つの基準と確かめ方を1枚にまとめます
提案の場では、次の表の質問をそのまま聞き、答えをメモします。5つの答えがそろい、基準1から3をデモか試用で実際に見てから、見積もりの話に進みます。
5つの基準に当てはめた例です
例として、株式会社AutomagicaのバックオフィスAIエージェント「カリスマAI」を当てはめると、基準2は Microsoft Teams、LINE WORKS、Google Chat に対応し、基準3は答えられない質問が担当者に届きます。基準4は、公開料金ではフリープランが0円でAIの回答は月50回までです。基準1と基準5は、ほかの製品と同じように上の質問で確かめます。
