解説記事

社内問い合わせAIが向いている会社、向かない会社

向いているのは、社員が100人を超えて聞き先が分からなくなった会社、拠点が本社と離れている会社、問い合わせの多くが手続きの案内である会社、担当者1〜2人が複数部門を兼務する会社です。向かない会社の4つの条件と、先にやることもまとめました。

2026年9月15日公開

提案書を片手に、自分の会社に合うかを考えている総務の担当者

社内問い合わせAIが向いているのは、社員が100人を超えて「誰に聞けばいいか」を全員が知らなくなった会社です。拠点や現場が本社と離れていて、同じ質問が場所ごとに来る会社も向いています。問い合わせの多くが手続きの案内で、答えが社内の文書にある会社、窓口の担当者が1〜2人で複数の部門を兼務している会社も同じです。反対に、社員100人以下で全員が顔見知りの会社には向きません。専任のヘルプデスク部門と問い合わせ管理システムが整っている会社も向きません。問い合わせの多くが作業の依頼である会社、答えの元になる文書がない会社も同じです。向かない会社は、規程を10件書き、窓口を1つに決めるところから始めます。

向いているのは、聞き先が分からなくなった会社です

窓口の担当者に、電話と書類と口頭で同時に質問が来ている

提案を受けた担当者がまず知りたいのは、「うちの規模で意味があるのか」です。判断の材料は4つあります。1つでも当てはまれば、試す価値があります。

社員が100人を超えています

社員が100人を超えると、「この件は誰に聞けばいいか」を全員が知っている状態は保てません。新しく入った社員は総務と人事の区別がつかず、目についた人に聞きます。聞かれた人が担当でなければ、たらい回しが始まります。

このとき増えるのは、質問そのものより、聞き先を探す時間と、違う部署に来た質問を振り直す時間です。問い合わせAIは、社員が聞き先を知らなくても、1か所に聞けば答えが返る状態を作ります。担当者の振り直す手間がなくなります。

拠点や現場が本社と離れています

工場、店舗、営業所、施設のように、本社と離れた場所で働く社員が多い会社では、同じ質問が場所ごとに来ます。本社なら隣の席の人に聞けば済むことでも、拠点の社員は電話かメールで本社に聞くしかありません。

拠点が5つあれば、引っ越したときの手続きを聞かれたらのような同じ質問が5回来ます。答えが1つに決まっている質問なら、AIが場所を問わず同じ答えを返せます。

問い合わせの多くが手続きの案内です

「どうやって申請するか」「締め日はいつか」「どの書式を使うか」は、手続きの案内です。この種類の問い合わせなら、答えは社内のどこかに文書として存在します。就業規則、経費規程、社内のマニュアル、過去に送った案内メールなどです。

AIが得意なのは、社員の言い方と文書の言葉のずれを埋めることです。社員は「経費っていつまでに出せばいいですか」と聞きますが、規程には「精算の締め日」と書いてあります。経費精算の締め日を聞かれたらのように答えが決まっている質問は、AIに任せられます。

窓口の担当者が1〜2人で、複数の部門を兼務しています

総務と人事と情シスを1人か2人で受けている会社では、担当者が休むと問い合わせが止まります。会議や外出の間に来た質問は、戻ってから順に片づけることになります。

このような会社では、AIが最初の受け答えを引き受けるだけで、担当者が席にいない時間にも答えが返ります。担当者に届くのは、AIが答えられなかった質問だけです。人を増やさずに窓口を開けておく方法として、いちばん効きます。

向かないのは、聞けば済む会社と、答えるだけでは終わらない会社です

小さな事務所で、社員が振り返って後ろの席の人に質問し、その場で答えてもらっている

向かない会社にも、はっきりした条件があります。当てはまるなら、AIより先にやることがあります。

社員が100人以下で、全員が顔見知りです

社員が100人以下で、誰が何を担当しているかを全員が知っている会社では、聞けば済みます。隣の席に声をかけるほうが、チャットに質問を打つより早いからです。AIを入れても、社員は使いません。

この規模で困っているのが「同じ質問に何度も答えること」なら、答えを1枚の文書にまとめて共有するだけで足ります。

専任のヘルプデスク部門と、問い合わせ管理システムが整っています

社員が1,000人を超える会社には、ヘルプデスクの専任部門が置かれていることが多くあります。問い合わせを受け付けて記録する管理システムも、すでに動いています。この場合、AIで置き換えたい対象が、すでに仕組みになっています。

この記事で扱う問い合わせAIは、専任の部門がなく、担当者が自分の仕事の合間に問い合わせを受けている会社に向けたものです。専任部門がある会社は、今のシステムにAIの機能を足せるかを先に確かめるほうが早く済みます。

問い合わせの多くが、質問ではなく作業の依頼です

「アカウントを発行してほしい」「共有フォルダの権限を付けてほしい」「在職証明書を出してほしい」は、質問ではなく作業の依頼です。答えを返しても、担当者の作業は残ります。共有フォルダが開けないと言われたらがこの例です。確認の手順まではAIで返せても、権限を付ける作業は担当者かシステムがやります。

来ている問い合わせのほとんどが依頼なら、AIを入れても担当者の作業は減りません。先に、依頼の受付の書式と承認の流れを整えるほうが効きます。

答えの元になる文書がどこにもありません

規程やマニュアルがなく、担当者の頭の中と過去のメールにしか答えがない会社では、AIに読ませるものがありません。問い合わせAIは社内の文書を元に答えるので、文書がなければ、答えられない質問ばかりが担当者に届きます。

この状態の会社は、まず規程を書くところからです。全部書く必要はなく、よく聞かれる質問10件分で足ります。

問い合わせの種類で、AIに任せられる範囲が決まります

4つの条件のうち、いちばん見落とされやすいのが問い合わせの種類です。来ている問い合わせは、手続きの案内、判断が要る相談、作業の依頼の3つに分けられます。AIに答えまで任せられるのは、このうち手続きの案内だけです。

問い合わせの3つの種類と、AIに任せられる範囲
手続きの案内判断が要る相談作業の依頼
例経費精算の締め日、引っ越しの届け出育休の取り方、体調を崩したときの休み方アカウントの発行、フォルダの権限の変更
答えるのに要るもの規程やマニュアル本人の事情と担当者の判断担当者の作業と承認
AIに任せられる範囲答えまで任せられる制度の一般的な説明まで。答えは担当者が出す申請方法の案内まで。作業は担当者かシステム
この種類が多い会社向いている担当者が直接受ける窓口を残す先に申請の書式と承認の流れを整える

判断が要る相談は、産休や育休を取りたいと相談されたらのように、本人の事情を聞かないと答えが決まりません。制度の一般的な説明まではAIでも返せますが、本人に合わせた答えは担当者が出します。作業の依頼は、申請方法の案内までをAIが返し、作業そのものは担当者かシステムが受けます。

先月の問い合わせを50件ほど書き出して3つに分けると、自社の比率が見えます。手続きの案内が半分を超えていれば、AIを入れる効果が出やすい会社です。依頼と相談ばかりなら、AIより先に受付の仕組みを整えます。

向いていない会社は、先に3つのことをします

担当者が机で、よく聞かれる質問の答えを1枚ずつ書いている

「向かない」と分かっても、それで終わりではありません。次の3つを済ませると、3か月ほどで向いている会社の条件に近づきます。

向いていない会社が先にやること
  1. 1先月よく聞かれた質問を10件選ぶ受信箱とチャットの履歴を1か月分さかのぼる
  2. 210件の答えを1枚ずつ文書にする誰が対象か、いつまでに、何を、どこに出すか
  3. 3質問の窓口を1つに決める電話や口頭で聞かれたら窓口を案内する
  4. 4作業の依頼は申請の書式と承認の流れを決める
  5. 5問い合わせを2週間記録し、3つの種類に分けて数える3か月後

規程を10件書きます

先月よく聞かれた質問を10件選び、それぞれの答えを1枚ずつ文書にします。書く項目は「誰が対象か」「いつまでに」「何を出すか」「どこに出すか」の4つで足ります。就業規則のような正式な規程でなくてかまいません。社内FAQの1項目として書けば、それがそのままAIに読ませる文書になります。

窓口を1つに決めます

質問の受け口を、チャットの1チャンネルか、1つのメールアドレスに決めます。電話や口頭で聞かれたら、答えたあとに「次からはこちらで聞けます」と一言添えます。窓口が1つになると問い合わせの記録が残り、どの質問が多いかを数えられるようになります。

作業の依頼は、申請の書式を作ります

アカウント発行や権限の変更のような依頼は、申請の書式と承認の流れを決めます。誰が承認するか、何営業日で対応するかを書式に書いておきます。依頼の受け方が決まると、「どうやって申請するか」という質問が手続きの案内に変わり、AIが答えられる問い合わせになります。

自分の会社がどちらか確かめる4つの質問

提案を受けたあと社内で判断するときは、次の4つの質問に順番に答えます。

社内問い合わせAIが向いているかの振り分け
社員は100人を超えているか
  • はい
    問い合わせの多くは、答えが社内の文書にある手続きの案内か
    • はい
      拠点や現場が本社と離れているか
      • はい
        向いている。同じ質問が場所ごとに来ている
      • いいえ
        窓口の担当者が1〜2人で、複数の部門を兼務しているか
        • はい
          向いている。担当者が席を外しても答えが返る
        • いいえ
          専任の窓口と管理の仕組みがあれば、今のままで足りる
    • いいえ
      向かない。先に規程を10件書き、依頼の受け方を整える
  • いいえ
    向かない。聞けば済むうちは、聞き先を1つに決める

1つ目の社員数は、社員名簿で確かめます。派遣や契約の社員も、問い合わせをする側なら数に入れます。

2つ目の問い合わせの種類は、先月の問い合わせを50件ほど書き出し、手続きの案内が何件あるかを数えます。記録がなければ、担当者の受信箱とチャットの履歴を1か月分さかのぼれば足ります。

3つ目の拠点は、本社以外に社員が10人以上いる場所がいくつあるかを数えます。

4つ目の担当者の人数は、総務、人事、経理、情シスの問い合わせを受けている人が何人いて、そのうち専任が何人かを書き出します。

4つの質問に答えれば、向いているか向かないかは判断できます。向いていると分かったら、次に確かめるのは、実際に来ている問い合わせにAIが答えられるかどうかです。これは提案の資料では分からないので、フリープランのある製品で2週間ほど試して確かめます。

例として、株式会社AutomagicaのカリスマAIを挙げます。社員はMicrosoft Teams、LINE WORKS、Google Chatから質問できます。AIが答えられない質問は担当者に届きます。拠点の社員も、普段使っているチャットからそのまま聞けます。フリープランは0円でAIの回答は月50回までなので、向いている会社の条件に当てはまるかを、先月の問い合わせで実際に確かめられます。