解説記事

社内FAQをAIに読ませるときの、回答の書き方

社内FAQをAIに読ませても的外れな答えが返るのは、1件に複数の質問と条件が混ざっているからです。1問1答への分け方、条件の書き分け、社員の言い方の添え方、日付の書き方をまとめました。

2026年10月19日公開

FAQの一覧を画面に出し、長い回答文を書き直している担当者

社内FAQをAIに読ませるなら、1件に質問を1つだけ入れ、答えの1文目に結論を書きます。AIが的外れな答えを返す原因は、たいていFAQの文章の側にあります。1件の中に複数の質問と条件が混ざっていると、AIはそのどれに答えるかを自分で選び、関係のない条件まで混ぜて返します。逆に1問1答に分けて条件を書き分けておけば、特別な書き方を覚えなくても答えは安定します。社内FAQが読まれない段階の話は社内FAQが読まれない理由と、作り込まずに始める方法にまとめました。ここでは、すでにあるFAQをAIに読ませる前提で、文章のどこを直すかを書きます。

AIは1件を丸ごと読むので、1件に質問を1つだけ入れます

社内の文書を参照して答えるAIは、質問に近い項目を探し、その項目の文章を材料にして答えを作ります。見つけた1件の中身が、そのまま答えの元になります。1件に「締め日」「領収書をなくしたとき」「出張費の扱い」の3つが書かれていれば、締め日を聞かれたときにも領収書の話が混ざります。読んだ社員は自分の場合がどれか分からず、結局担当者に聞きます。

よく見かけるのは、規程の条文をそのまま貼った長い項目です。1つの見出しの下に、対象者、期限、例外、提出先、罰則が続きます。人は必要なところを読み飛ばして探せますが、AIは全部を同じ重さで読みます。分けるときは、社員が1回の質問で聞いてくる単位にします。「経費精算の締め日は」「領収書をなくしたときは」「出張費の締め日は」で3件です。

1件に詰めた書き方と、1問1答に分けた書き方
1件に詰めた書き方1問1答に分けた書き方
見出し経費精算規程について経費精算はいつまでに出せばいいですか?
1件の分量条文5項目を1,500字で続けて書く答えを3〜5文で書く
条件の扱い例外を同じ段落に続けて書く例外は別の項目に分け、1行で参照先を書く
AIの答え方締め日を聞かれると例外も混ぜて返す締め日だけを返し、例外は聞かれたときに返す
直すときどこを直したか追えなくなる該当の1件だけを直せる

分ける作業は、1件を3件に増やす作業です。件数は増えますが、管理はかえって楽になります。経費精算の締め日を聞かれたらのように、質問ごとに答えが決まっていれば、直すときも該当の1件だけで済みます。

答えの1文目に結論を置き、条件はそのあとに書きます

文化審議会は2022年1月7日に「公用文作成の考え方」を建議しました。1951年の「公用文作成の要領」に代わる、政府の公用文作成の手引として使われることを目指したものです。ここに書かれている文の書き方は、AIに読ませる社内FAQにもそのまま使えます。

建議は、文の書き方として「一文を短くする」「一文の論点は、一つにする」「三つ以上の情報を並べるときには、箇条書を利用する」の3つを挙げています。一文の適当な長さは一概に決められないとしながらも、50〜60字ほどになってきたら読みにくくなっていないか意識するとよいとしています。あわせて、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どうした」という基本的な語順を踏まえておけば、おおむね読み取りやすい文になるとしています。

1文に条件を3つ入れると、AIはどれが条件でどれが結論かを取り違えます。たとえば「経費精算については、原則として毎月末締めとしているものの、月末が休日の場合は前営業日とし、出張費については別途取り扱うこととする」という1文は、締め日を聞かれたときに「別途取り扱う」だけを返す答えになりがちです。「前月分の経費精算は、毎月末日までに申請します。月末が休日のときは、その前の営業日が締め日です。出張費の締め日は別に決めています」と3文に分けると、最初の1文だけで答えになります。

長い回答文を3つの短い文に書き分けている担当者

条件で答えが変わる質問は、条件ごとに分けて書きます

雇用の形、入社からの期間、部署によって答えが変わる質問があります。このとき「人によって異なります」と書くと、AIはその文をそのまま返します。社員は何も分からないまま担当者に聞くことになり、FAQを置いた意味がなくなります。条件が2つか3つに収まるなら、条件ごとに答えを書き切ります。

書き切れない条件は、当てはまらないときの出口を1行入れて閉じます。AIは「それ以外のとき」を自分で補えないので、出口の文がないと、近い条件の答えを無理に当てはめます。「このどれにも当てはまらないときは【人事の窓口】に確認してください」と書いておけば、AIはその文を返せます。有給休暇の申請方法を聞かれたらのように、法令で決まる部分と自社で決まる部分が混ざる質問では、先に法令で決まる部分を書きます。

条件がある質問の書き分け
答えが条件によって変わるか
  • はい
    条件は3つ以内に収まるか
    • はい
      条件ごとに答えを書き切り、当てはまらないときの窓口を1行添える
    • いいえ
      よく聞かれる条件を2つだけ書き、残りは窓口に確認と書く
  • いいえ
    答えを3〜5文で書き切る

社員が使う言い方を、答えの中に書き添えます

社員は「有休の取り方」と聞きます。FAQの見出しが「年次有給休暇の取得手続」だけだと、言葉が結びつかず、別の項目が返ってくることがあります。社内の通称も同じです。「ワークフロー」「勤怠システム」「ポータル」のような呼び方が人によって違う会社では、どれで聞かれても同じ項目に届くようにします。

建議は、略語について「元になった用語を示してから用い、必要に応じて説明を添える」としています。文書中に繰り返し出てくる場合は、初出箇所で「知的財産(以下「知財」という。)」などと示し、以降は省略した語を使えるとしています。社内FAQでは、ここからもう一歩進めて、正式名称と社内の通称の両方を本文に1度ずつ書いておきます。「年次有給休暇(社内では「有休」と呼んでいます)」の形です。言い換えを1行足すだけで、同じ内容を複数の項目に重ねて書く必要がなくなります。

集める材料は、問い合わせの履歴にあります。社員が送ってきた文章の言葉を、そのまま見出しか本文に移します。パソコンのパスワードを忘れたと言われたらのような質問では、「ログインできない」「ロックされた」「パスワードが通らない」など、社員の言い方が何通りもあります。思いつきで言い換えを増やすより、実際に来た言葉を足すほうが当たります。

日付と金額は、読んだ日に左右されない書き方にします

「来月から」「今年度」「先日の通達どおり」は、AIが基準の日を持たないため意味が決まりません。書いた人は分かっていても、半年後に読んだAIは「来月」をいつだと解釈するか分かりません。「2026年4月1日から」と日付で書きます。期間も「申請から2週間」のように、起点と長さで書きます。

金額や締め日は、自社で決まる数字です。社外に出す文例では【】で伏せますが、社内FAQはそのまま社員が読むものなので、実際の数字を入れます。数字を入れたら、その項目に「最終確認日」と「担当窓口」を1行ずつ足します。制度が変わったときにどの項目を見直すかが、この2行で決まります。年末調整の書類の書き方を聞かれたらや通勤手当の変更を届け出たいと言われたらのように、毎年決まった時期に内容が変わる質問は、見直す月を年間の予定に書いておきます。

古い数字が1件残っていると、AIはその数字をそのまま返します。人が読むFAQなら「去年の案内かな」と気づけますが、AIの答えには更新日が出ないことがあります。数字を含む項目は、ほかの項目より短い間隔で見直します。

表、画像、添付ファイルの中だけに答えを置きません

画面の表とスクリーンショットを見ながら、同じ内容を文章で書き足している担当者

手順をスクリーンショットで並べたFAQや、金額を一覧表にしたExcelを添付したFAQは、人には分かりやすい形です。ただ、画像の中の文字や、添付ファイルの中身を読み取れない仕組みもあります。読み取れないと、AIはファイル名と前後の文だけで答えを作ります。「詳しくは添付の表をご覧ください」としか書いていない項目は、そのままの文が返ってきます。

表や画像を使うなら、同じ内容を文でも1行書きます。「交通費の上限は【片道○円】です」と文で書き、横に表を置く形です。手順の画像も、「1. 画面右上の【設定】を開きます」と文を添えます。社員向けには画像があるほうが親切なので、消す必要はありません。AIが読む分の文章を足すだけです。

個人の事情は消し、AIに渡す前に確認します

個人情報保護委員会は2023年6月2日に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」を公表しました。個人情報取扱事業者が生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合には、特定された個人情報の利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認するよう求めています。また、あらかじめ本人の同意を得ずに個人データを含むプロンプトを入力し、その個人データが応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合は、個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性があるとしています。そのため、サービスを提供する事業者がその個人データを機械学習に利用しないことなどを、十分に確認するよう求めています。

社内FAQをAIに読ませるときは、FAQの文章がAIへの入力になります。過去の問い合わせをそのままFAQに起こすと、氏名、部署、病名、口座番号が残ります。FAQに起こす段階で消します。消すのは、社員が特定できる情報と、その人固有の事情です。「Aさんが育休を1年半取った例」ではなく、「育休を延長するときの手続き」に書き換えます。

問い合わせ1件をAI向けのFAQに起こす流れ
  1. 1問い合わせと返信をコピーする
  2. 2氏名、部署、病名などの個人の情報を消す
  3. 3質問1つにつき1件に分ける
  4. 4答えの1文目に結論を書く
  5. 5条件と、当てはまらないときの窓口を足す
  6. 6最終確認日と担当窓口を1行ずつ足す

出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」

社内文書を読ませるAIを選ぶときは、入力した文章を機械学習に使わない設定になっているかを提供元の説明で確かめ、確かめた内容を決裁の資料に残します。

直す順番は、AIが答えられなかった質問からにします

FAQが200件あるとして、全部を1問1答に直すのは現実的ではありません。直す順番は、AIの答えの記録で決まります。見るのは、AIが「分かりません」と返した質問、担当者に転送された質問、社員が同じことを続けて聞き直した質問の3つです。この3つは、FAQの文章が足りていないか、分かれていない箇所を指しています。

週に1回、記録の上から10件を見て、そのうち3件を直します。1件あたり10分ほどで、分けて、1文目を直して、最終確認日を入れるところまで終わります。よく聞かれる質問から順に直るので、2か月目には転送される件数が減ります。

直した結果は、同じ質問をAIに聞いて確かめます。社員が使う言い方で3通り聞いて、3回とも同じ答えが返れば終わりです。違う項目が返ってくるなら、見出しの言葉か、書き添えた通称が足りていません。直したあとに1回聞く手順を入れておくと、書き方の良し悪しが担当者の感覚ではなく結果で分かります。

FAQを1問1答に直したあとは、バックオフィスAIエージェントに先に答えてもらう方法もあります。株式会社AutomagicaのカリスマAIは Microsoft Teams、LINE WORKS、Google Chat で使えて、答えられない質問は担当者に届きます。フリープランは月額0円で、AIの回答は月50回までです。

出典