USBメモリを使ってよいか聞かれたら

社員からはこう聞かれます
- 会社のパソコンでUSBメモリを使ってもいいですか?
- 家で続きをやりたいので、データをUSBメモリに入れて持ち帰りたいんですが
- 取引先からUSBメモリでデータをもらったんですが、開けて大丈夫ですか?
ひと言でいうと
USBメモリを業務で使えるかは会社の決まりで変わり、私物の持ち込みは禁止か管理者の許可制にする形が多く取られています。会社が貸し出すUSBメモリでも、個人情報を入れて持ち出すときはファイルを暗号化します。社員には【使えるUSBメモリ】と【持ち出しの承認の要否】を伝えます。
この質問は、資料を持ち帰る予定や取引先とのやり取りが決まったあとに来ます。社員が知りたいのは可否そのものではなく、そのデータを今日どう運ぶかです。可否だけを答えると、社員は自分の判断で手元のUSBメモリを使います。
- はい重要な情報や個人情報を入れて持ち出すか
- はい承認の手続きと暗号化の方法を案内する
- いいえ社内の決まりの範囲で使ってよいと伝える
- はい
- いいえ私物の業務利用を会社が許可しているか
- はい管理者の許可の取り方を案内する
- いいえ貸出品かクラウドの共有リンクを案内する
- はい
答えるときに押さえること
1可否の前に、何をどこへ運びたいのかを聞きます
USBメモリを使いたいという相談は、手段の質問の形で来ます。答える前に、運ぶデータの中身、持って行く先、いつまでに必要かの3つを聞きます。
家で続きの作業をしたいだけなら、会社が契約しているクラウドストレージで足りることが多いです。取引先の会議室で資料を映したいなら、印刷や画面共有でも間に合います。相手の会社がネット経由の受け渡しを止めていて、USBメモリしか選べないこともあります。
運ぶ目的を聞けば、代わりの方法を出せます。聞かずに「だめです」と答えると、社員は相談をやめて、私物のUSBメモリで済ませてしまいます。
2私物のUSBメモリは、許可制か禁止かのどちらで運用しているかを答えます
私物の機器をどう扱うかは、会社が先に決めておく部分です。IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版の付録5(情報セキュリティ関連規程のサンプル)は、私物のパソコンやスマートフォン、USBメモリ、HDDなどを業務で使う場合について、2つの形を載せています。システム管理者の許可を得る形と、利用を禁止する形です。会社はどちらかを選んで規程に書きます。
同じサンプルは、社内への持ち込みについても、システム管理者の許可を得る形と禁止する形を示しています。持ち込みを認める場合も、充電を除いて社内のパソコンやサーバーへの接続は禁止すると書かれています。
まず自社の規程がどちらなのかを確かめます。書かれていなければ、その場で可否を言い切らず、【情シスの窓口】で確認してから返すと伝えます。
3使ってよい場合は、消去と暗号化と紛失対策を条件にします
同じサンプルは、情報資産を社外に持ち出すときの決まりとして、社外秘なら所属部門長、極秘なら代表取締役の許可を得ることを挙げています。USBメモリなどの電子媒体に保存して持ち出す場合は、不要なデータを完全消去専用ツールで消し、持ち出すデータを暗号化するとしています。会社が貸し出したUSBメモリについても、重要な情報または個人情報を保存して外出する場合はファイルを暗号化すると書かれています。
紛失を防ぐ方法も具体的です。USBメモリのような小型の電子媒体には、大きなタグを付ける、ストラップで体やかばんに固定する、落としてもすぐ分かるように鈴を付けるといった方法が挙げられています。携行中は常に監視できる距離を保つとも書かれています。
社員に伝えるのは、要らないデータを中に残さないこと、ファイルを暗号化すること、持っている間は体から離さないことの3つです。
4なくしたときに何が起きるかを、渡す前に伝えます
個人情報保護委員会のFAQは、個人データが記録されたUSBメモリを紛失し、紛失場所が社内か社外か特定できない場合は、漏えい(又は漏えいのおそれ)に該当すると考えられるとしています。社内で紛失したままである場合は、滅失(又は滅失のおそれ)に当たるとされています。社内を探している間も、報告の判断は待ってもらえません。
個人情報保護法施行規則の第7条は、委員会への報告が必要になる事態を4つ挙げています。1つ目は、要配慮個人情報が含まれる個人データの漏えい等です。2つ目は、不正に利用されると財産的被害が生じるおそれがある個人データの漏えい等です。3つ目は、不正の目的をもって行われたおそれがある行為による漏えい等です。4つ目は、本人の数が1,000人を超える漏えい等です。ガイドライン(通則編)は、報告を要する事例として、病院で患者の診療情報や調剤情報を含む個人データを記録したUSBメモリを紛失した場合を挙げています。
同じガイドラインは、漏えい等が発生した個人データに高度な暗号化等の秘匿化がされている場合には報告を要しないとしています。前の項目の暗号化は、ここで効きます。
報告が必要な事態に当たるときは、知った時点からおおむね3~5日以内に速報を出し、知った日から30日以内(規則第7条第3号の事態では60日以内)に確報を出します。本人への通知も必要になります。社員に覚えてもらうのは1つだけです。なくしたと気づいたら、探す前に【情シスの窓口】へ連絡することです。
5受け取ったUSBメモリと、要らなくなったUSBメモリの扱いも決めておきます
取引先からUSBメモリでデータを受け取ったときは、差し込む前にウイルス検査をします。IPAのサンプル規程も、電子媒体でファイルの受け渡しを行う場合は、媒体内のファイルにウイルス検知を実施するとしています。あわせて、外部記録媒体を使う端末では自動実行(auto-run)や自動再生(auto-play)を無効にするとしています。差し込んだ瞬間にプログラムが動くのを止める設定です。
使い終わったUSBメモリの始末も決めておきます。サンプル規程は、社外秘または極秘の情報資産を保存した媒体を廃棄する場合は、破壊、細断、完全消去のいずれかを行うとしています。OSによる削除やクイックフォーマットでは足りないと明記されています。再利用する場合も、完全消去をしてからとされています。
持ち出しのために渡したUSBメモリが、そのまま社員の引き出しに残っているのはよくあることです。返却先と期限を決めて、貸し出すときに一緒に伝えます。
自社の規程で確認すること
会社によって答えが変わる部分です。社員に答える前に確かめてください。
- 私物のUSBメモリを業務で使ってよいかどうかと、許可を出す人
- 会社が貸し出すUSBメモリがあるかどうかと、借りるときの手続き
- 重要な情報や個人情報を持ち出すときの承認の要否と、承認する人
- 暗号化に使うソフトや機能と、その手順
- なくしたことに気づいたときの連絡先と、連絡の期限
- 要らなくなったUSBメモリの返却先と、廃棄の方法
社内FAQに貼れる回答文例
【】の部分を自社の内容に書き換えて使えます。
Q. USBメモリを使ってもいいですか?
A. 私物のUSBメモリを業務で使うことは【禁止/管理者の許可制】です。データを持ち運ぶ必要があるときは、まず【クラウドストレージ名】の共有リンクを使ってください。
USBメモリでないと運べない場合は、次の順で進めてください。
1. 【貸出の窓口】でUSBメモリを借りてください。私物は使わないでください。
2. 持ち出すデータに重要な情報や個人情報が含まれる場合は、【承認者】の承認を受けてください。
3. 中に入れるのは今回必要なファイルだけにし、【暗号化の方法】でファイルを暗号化してください。
4. 持ち運ぶ間は、かばんの中で体から離さないでください。
5. 用が済んだら、【返却の期限】までに【貸出の窓口】へ返してください。
なくしたことに気づいたときは、自分で探す前に【情シスの窓口(内線◯◯)】へ連絡してください。中身によって会社として届け出が必要になり、期限があります。
続けて聞かれやすいこと
会社のパソコンにUSBメモリを差し込んでも、何も反応しません
機器の故障と決めつける前に、会社の設定で止めている可能性を確かめます。IPAのサンプル規程にも、私物の機器について社内のパソコンやサーバーへの接続を禁止する形が載っています。同じ考え方で、パソコン側の設定でUSBメモリを読めなくしている会社があります。自社がその設定にしているかどうかを、社員に答える前に確認します。
暗号化できるUSBメモリを自分で買えば、使ってよいですか
製品の機能では決まりません。私物を業務で使えるかどうかが先で、そこが禁止なら答えは変わりません。また、個人情報保護委員会のガイドラインが報告を要しないとしているのは、高度な暗号化その他の必要な措置が講じられている場合です。製品の説明文だけでは、この条件を満たすかを担当者が判断できません。会社として使う製品と設定を決めておきます。
取引先からUSBメモリで渡してほしいと言われました
断れない相談なので、会社としての手順を先に用意しておきます。持ち出しの承認を取り、渡すデータだけを入れて暗号化し、パスワードは別の手段で伝えてもらいます。渡したUSBメモリを返してもらうのか、相手方で廃棄してもらうのかも、その場で決めておきます。あとから確認できるよう、いつ誰に何を渡したかを記録に残します。
答えるときに間違えやすいこと
- 運ぶ目的を聞かずに可否だけを答え、代わりの方法を示せないまま相談を終えてしまう
- 会社が貸し出したUSBメモリなら暗号化は要らないと思い込む
- パスワードをかけたから届け出は不要だと説明してしまう(ガイドラインの条件は高度な暗号化等の秘匿化)
- 紛失の連絡を受けたあと、社内を探し終わるまで報告の判断を待ってしまう
- 要らなくなったUSBメモリをクイックフォーマットだけで再利用させてしまう