情シス

会社のメールを個人のGmailなどに転送していいか聞かれたら

2026年10月1日に内容を確認

社員からはこう聞かれます

  • 外回りが多いので、会社のメールを自分のGmailに自動転送してもいいですか?
  • 家でも急ぎの連絡に気づきたいんですが、転送の設定ってどうやるんですか?
  • 前の会社では普通にやっていたんですが、うちはだめなんですか?

ひと言でいうと

会社のメールを個人のメールアドレスへ転送することは、IPAが公開している情報セキュリティ関連規程のサンプルで禁止事項に挙げられています。転送先のメールボックスは会社が管理できないので、個人情報や社外秘を含むメールが入ると会社の安全管理措置の外に出ます。社員には【自社の転送の可否】と【外出先でメールを見る正規の方法】を伝えます。

この質問は、外出や在宅勤務が増えたあとに来ます。社員が知りたいのは転送の手順ではなく、連絡に気づけないまま時間が過ぎるのを避ける方法です。代わりの方法を示さずに転送を断ると、社員はメールを1通ずつ手で個人宛てに送るほうに切り替えます。

メールの転送を頼まれたときの判断
自社の規程で社外への自動転送を禁止しているか
  • はい
    外出先でメールを見る正規の方法が用意されているか
    • はい
      その設定の手順を案内する
    • いいえ
      代わりの方法を決めるまで待ってもらう
  • いいえ
    許可の申請と承認の手続きが決まっているか
    • はい
      申請先と条件を案内する
    • いいえ
      情シスで確認してから返すと伝える

答えるときに押さえること

1可否を答える前に、何に困って転送したいのかを聞きます

転送したいという相談は、手段の形で来ます。答える前に、いつどこで見たいのか、見たいのは全部のメールか特定の相手からだけか、今は何を使っているのかの3つを聞きます。

外出先で見たいだけなら、会社が契約しているメールのスマートフォンアプリやリモートアクセスの仕組みで足ります。通知にだけ気づきたいなら、チャットへの通知連携で済むこともあります。困りごとを聞けば、代わりの方法を出せます。聞かずに「禁止です」とだけ返すと、社員は相談をやめて、必要なメールを1通ずつ自分のアドレスへ送るようになります。こちらのほうが記録に残りにくく、止めるのも難しくなります。

2IPAの規程サンプルでは、私用メールアドレスへの転送は禁止事項です

メールの使い方は、会社が先に決めておく部分です。IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版の付録5(情報セキュリティ関連規程のサンプル)は、電子メールの利用の禁止事項として4つを挙げています。業務に支障をきたすおそれがある使用、私用電子メールサーバーへの接続、私用メールアドレスへの転送、受信メールのHTML表示です。

同じサンプルは、私物のIT機器を業務で使う場合の決まりとしても、社用のメールアドレスで受信したメールを社員個人のアドレスに転送することを禁止すると書いています。社内で使ったデータを個人のアドレスに送ることも、あわせて禁止するとしています。

クラウド型のメールについては、業務で使う場合はシステム管理者の許可を得ること、許可されたパソコン以外からのメールの取り出しとエクスポートを禁止することを挙げています。まず自社の規程がどう書かれているかを確かめます。書かれていなければ、その場で可否を言い切らず、【情シスの窓口】で確認してから返すと伝えます。

3個人のメールボックスに入った個人情報は、会社の安全管理措置の外に出ます

禁止する理由を、社員にも説明できるようにしておきます。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、個人データの「漏えい」を、個人データが外部に流出することと定めています。該当する事例として、個人データを含むメールを第三者に誤送信した場合を挙げています。

同じガイドラインの別添は、技術的安全管理措置として、取り扱える担当者と範囲を限定するアクセス制御と、情報システムの使用に伴う漏えい等の防止を挙げています。会社が管理していないメールボックスへ業務のメールが流れ続けると、どちらも効かなくなります。退職後もそのアカウントは残り、会社は中身を消せません。

会社の側にも義務があります。同ガイドラインは、個人データを取り扱わせるにあたって社員に必要かつ適切な監督を行うこと(法第24条)を求めています。監督を行っていない事例として、内部規程に違反して個人データの入ったパソコンや記録媒体が繰り返し持ち出されていたのを放置し、紛失して漏えいした場合を挙げています。転送の設定に気づきながら放置するのは、これに近い状態です。

4退職が近い社員からの相談は、営業秘密の扱いとして見ます

同じ「転送したい」でも、退職や異動が決まっている社員からの相談は、別の確認が要ります。不正競争防止法第2条第6項は、営業秘密を、秘密として管理されている事業活動に有用な技術上または営業上の情報で、公然と知られていないものと定めています。

経済産業省の営業秘密管理指針(令和7年3月31日最終改訂)は、不正利用や不正取得のリスクが表に出ている場合の追加の措置を挙げています。人事異動や退職のたびのパスワード変更、メールソフトの設定変更による私用メールへの転送制限、USBやスマートフォンを物理的に接続できなくすることです。あわせて、通常の状況ではこれらは漏えい対策として有効でも、秘密管理性を満たすために必ず要るものではないとしています。転送を止めていないから営業秘密と認められない、という話ではありません。

IPAのサンプル規程は、在職中に交付された資料や個人情報、取引先から受け取った資料とその複製物の一切を退職時に返すこと、退職時のチェックリストで返却の漏れを確かめることを挙げています。返却物には情報機器とアクセス権(IDと鍵)も含めるとしています。退職の手続きの中に、転送設定の確認を1行足しておきます。

5設定を止めるだけで終わらせず、記録と代わりの方法をそろえます

すでに転送されている分があるので、設定を消すだけでは終わりません。社員に、いつから転送していたのか、転送先のアカウントに業務のメールがどれだけ残っているかを確かめてもらい、消してもらいます。消したことを本人に書面か【情シスの窓口】への返信で残してもらうと、あとから経緯をたどれます。

IPAのサンプル規程は、社外秘または極秘の情報ファイルを社外へ転送する場合は送信履歴を残すとしています。共有の記録に含める項目として、共有日と時刻、共有した情報、送信者の情報、受信者の情報、共有手段を挙げています。業務上どうしても社外へ送る必要があるときに、何を記録するかの目安になります。

最後に、会社が認めている外からのメールの見方を、設定の手順つきで案内します。そこが用意できていないと、同じ相談が別の社員から繰り返し来ます。

自社の規程で確認すること

会社によって答えが変わる部分です。社員に答える前に確かめてください。

  • 会社のメールを社外のアドレスへ自動転送することを禁止しているか、許可制にしているか
  • 許可制の場合の申請先と、許可を出す人
  • 外出先や自宅から会社のメールを見る正規の方法(アプリ名、リモートアクセスの手順)
  • 私物のパソコンやスマートフォンで会社のメールを扱ってよいかどうか
  • 転送設定が見つかったときの連絡先と、消したことの報告のしかた
  • 退職の手続きのチェックリストに、転送設定の確認が入っているか

社内FAQに貼れる回答文例

【】の部分を自社の内容に書き換えて使えます。

回答文

Q. 会社のメールを自分のGmailなどに転送してもいいですか?

A. 会社のメールアドレスで受け取ったメールを、個人のメールアドレスへ転送することは【禁止/管理者の許可制】です。個人のメールボックスは会社が管理できないため、取引先や社員の個人情報が入ったメールが外に出てしまいます。

外出先や自宅でメールを見たいときは、次の方法を使ってください。

1. スマートフォンで見る場合は、【アプリ名】を【設定の手順のある場所】の手順で設定してください。

2. 自宅のパソコンから見る場合は、【リモートアクセスの名称】を使ってください。手順は【手順のある場所】にあります。

3. 急ぎの連絡に気づきたいだけの場合は、【チャットツール名】への通知の設定をご案内します。【情シスの窓口】までご連絡ください。

すでに転送の設定をしている場合は、叱責することはありませんので、【情シスの窓口(内線◯◯)】までご連絡ください。設定を消す手順と、転送先に残ったメールの消し方をご案内します。

続けて聞かれやすいこと

答えるときに間違えやすいこと

  • 可否だけを答えて代わりの方法を示さず、社員が1通ずつ手で個人宛てに送るようになる
  • 設定を消させて終わりにし、転送先に残っているメールを消してもらわない
  • 退職の手続きのチェックリストに転送設定の確認が入っておらず、退職後も届き続ける
  • 転送を止めていないことを理由に、自社の情報は営業秘密として守られないと説明してしまう
  • 申告してきた社員を責めてしまい、次から誰も申告しなくなる

出典

2026年10月1日時点で内容を確認しています。