社内イベントの参加が任意かどうか聞かれたら

社員からはこう聞かれます
- 来月の懇親会、出なくても大丈夫ですか?
- 土曜の社内イベントに出たら、残業代は出ますか?
- 案内に全員参加と書いてありましたが、欠席すると評価に響きますか?
ひと言でいうと
社内イベントへの参加を会社が義務づけると、その時間は労働時間となり、所定の労働時間を超えた分や休日の分には割増賃金が必要になります。任意にするなら、欠席を欠勤扱いにせず評価にも影響させないことまで案内に書きます。【イベントごとの参加の扱い】を企画の段階で決め、社員にはその扱いをそのまま伝えます。
「来月の懇親会、出なくても大丈夫ですか」と聞く社員が気にしているのは、出欠そのものではありません。断ったら欠勤になるのか、評価に響くのか、休日に出た分の賃金はどうなるのかです。答えるときは、そのイベントを任意で開くのか業務として開くのかを先に決め、決めた扱いをそのまま伝えます。
- はい所定の労働時間内に開催するか
- はい通常の勤務として扱うと伝える
- いいえ時間外や休日の労働として記録し、割増賃金を案内する
- はい
- いいえ欠席を欠勤扱いや評価に反映しているか
- はい実質は義務なので参加の扱いを決め直すと伝える
- いいえ参加は自由で、欠席しても不利にならないと伝える
- はい
出典:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
答えるときに押さえること
1任意かどうかは、会社が参加を義務づけているかで決まる
最初に「このイベントは任意です」「このイベントは業務です」のどちらかを言い切って答えます。あいまいに答えると、社員は上司の反応を見て出欠を決めることになります。
労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間で、使用者の明示または黙示の指示により社員が業務に従事する時間がこれに当たります。参加することが業務上義務づけられている研修や教育訓練の受講は、労働時間として扱わなければなりません(厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」)。社内イベントも同じ考え方で見ます。
労働時間に当たるかどうかは、労働契約や就業規則の定めのいかんによらず、客観的に定まります。社員の行為が会社から義務づけられ、または余儀なくされていた状況があったかどうかで、個別に判断されます。案内に「任意」と書いていても、欠席した人を欠勤扱いにしていれば、実際には義務だと見られます。
2業務として開くなら、時間と賃金の扱いを先に決める
参加を義務づけるイベントは、勤務と同じ扱いになります。所定の労働時間内に開くなら、通常の勤務として記録します。
所定の労働時間を超える時間や休日に開くなら、時間外労働か休日労働です。労働時間の上限は1週40時間、1日8時間です。これを超えて働かせるには、労使の書面による協定(36協定)を結び、行政官庁に届け出ておく必要があります(労働基準法第32条、第36条)。
割増賃金の率は、延長した労働時間については2割5分以上です。会社は毎週少なくとも1回の休日を与えなければならず(同法第35条)、この休日に働かせたときは3割5分以上になります(同法第37条と、その率を定める政令)。延長した時間が1か月60時間を超えた分は5割以上です。土曜や日曜に全員参加の行事を開くなら、この賃金まで見込んでから企画します。
3任意と答えるときは、欠席したあとのことまで伝える
「任意です」の一言だけでは、社員の心配は消えません。欠席の連絡先と期限、欠席しても欠勤にならないこと、評価や配属に影響しないことを、同じ案内に並べて書きます。
出欠を取るときは、欠席の理由を書かせないようにします。通院や家族の事情を書かせると、答える側は知らせたくないことまで伝えることになります。出席か欠席の2択と、締め切りだけで足ります。
欠席した人に、代わりに現金や金券を渡すのはやめます。社員の慰安のための旅行では、自己の都合で参加しなかった人に金銭を支給すると、参加者と不参加者の全員について、その金額に相当する給与の支給があったものとされます(国税庁のタックスアンサーNo.2603)。
4幹事や準備の仕事は、参加とは分けて考える
イベントそのものが任意でも、会場の予約、買い出し、当日の受付や司会は会社の仕事です。担当者や幹事に頼んだ時間は、労働時間として記録します。
所定の労働時間の外に準備を頼むなら、残業と同じ扱いにします。打刻をどうするか、申請を誰に出すかを、頼むときに一緒に伝えます。持ち帰りの作業や、休日の買い出しも同じです。
幹事を毎回同じ人に回すと、その人だけは任意のイベントに必ず出ることになります。持ち回りにするか、担当部署の業務として割り当てるかを決めておきます。
5断りにくい空気にしない
参加を任意にしても、その場の言動は会社の問題として残ります。厚生労働省の指針では、「職場」とは会社が雇う社員が業務を遂行する場所を指し、通常就業している場所以外でも、業務を遂行する場所であれば職場に含まれるとされています。業務として開くイベントの会場は、職場と同じ扱いになります。
職場のパワーハラスメントとは、優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、社員の就業環境が害されるものをいいます。この3つをすべて満たすものが該当します。上司が繰り返し飲酒を勧める、欠席を責める、二次会への同行を求めるといった行為は、パワーハラスメントに当たり得ます。
会社は、社員が生命や身体の安全を確保しつつ働けるよう、必要な配慮をするものとされています(労働契約法第5条)。お酒を出す会なら、車やバイクで来ないよう事前に伝え、お酒以外の飲み物も同じだけ用意します。食物アレルギーの有無や、妊娠中・通院中の社員への配慮事項は、申し込みのときに確認しておきます。
自社の規程で確認すること
会社によって答えが変わる部分です。社員に答える前に確かめてください。
- イベントごとに、参加を任意とするか業務とするか
- 開催の時間帯(所定の労働時間内か、時間外か、休日か)
- 業務として開くときの労働時間の記録方法と、割増賃金の扱い
- 幹事と準備の担当、その時間の申請方法
- 会費の負担(会社が持つ範囲と、社員の自己負担の額)
- 欠席の連絡先と期限、キャンセル料が発生したときの扱い
社内FAQに貼れる回答文例
【】の部分を自社の内容に書き換えて使えます。
Q. 社内イベントには必ず参加しないといけませんか?
A. イベントごとに扱いが違うので、【イベントごとの参加の扱い】をご覧ください。「任意」のイベントは参加も欠席も自由です。欠席しても欠勤にはならず、評価や配属にも影響しません。欠席するときは【欠席の連絡先】へ【欠席連絡の期限】までにご連絡ください(理由は書かなくてかまいません)。「業務」のイベントは勤務として扱います。所定の労働時間の外や休日に開くものは、時間外労働または休日労働として記録し、割増賃金をお支払いします。打刻と申請は【時間外の申請方法】でお願いします。会費は【会費の負担】です。幹事や準備をお願いするときは、その時間も勤務として扱います。
続けて聞かれやすいこと
案内に「原則全員参加」と書いていますが、問題はありますか?
労働時間に当たるかどうかは、就業規則や案内の書き方ではなく客観的に決まります。参加が義務づけられ、または余儀なくされていた状況があれば、労働時間と見られます。「原則全員参加」と書いて欠席者に理由を説明させているなら、業務として開いて賃金を払うか、本当に任意にするかのどちらかに寄せます。
懇親会の飲食代は、交際費になりますか?
専ら社員の慰安のために行う運動会、演芸会、旅行などのために通常要する費用は、交際費等から除かれ、福利厚生費などとされます。創立記念日や新社屋の落成式などに際して、社員等におおむね一律に社内で供与される通常の飲食の費用も福利厚生費です(国税庁のタックスアンサーNo.5261)。取引先を招く会は交際費等になるので、経理に先に相談します。
社員旅行の費用は、給与として課税されますか?
旅行の内容を総合的に見て判断されます。旅行の期間が4泊5日以内で、参加した人数が全体の人数の50パーセント以上であり、社員が受ける経済的利益が少額にとどまると認められるときは、原則として参加した人の給与としなくてよいとされています(国税庁のタックスアンサーNo.2603)。海外に行くときは、外国での滞在日数が4泊5日以内かで見ます。
参加を強く求められてつらいとき、相談できる窓口はありますか?
パワハラの相談窓口を定めて社員に周知することは、労働施策総合推進法第31条第1項に基づき、業種や規模を問わずすべての事業主の義務です。窓口は担当者を決めるだけでも、外部の機関に委託してもかまいません。
詳しくは「パワハラの相談窓口を作る義務があるか聞かれたら」をご覧ください。
答えるときに間違えやすいこと
- 案内に「任意」と書くだけで終わらせない。欠席を欠勤扱いにしたり評価に反映したりすれば、実際には義務と見られる
- 業務として開くイベントを所定の労働時間の外や休日にやったまま、割増賃金を払い忘れない
- 幹事や準備の時間を「イベントは任意だから」と労働時間から外さない
- 欠席した人に現金や金券を渡さない。参加者と不参加者の全員が給与課税の対象になる
- 出欠表に欠席の理由を書かせない。通院や家族の事情まで伝えさせることになる