人事・労務

パワハラの相談窓口を作る義務があるか聞かれたら

2026年10月9日に内容を確認

社員からはこう聞かれます

  • うちの会社にパワハラの相談窓口はありますか?法律で作る義務があると聞きました
  • 窓口って社内に置かないとだめですか?外部に頼むのは認められないんですか?
  • 窓口に相談したことが上司に伝わって、評価が下がったりしませんか?

ひと言でいうと

パワハラの相談窓口を定めて社員に周知することは、労働施策総合推進法31条1項に基づき、業種や規模を問わずすべての事業主の義務です。中小企業も2022年4月1日から対象で、窓口は担当者を決めるだけでも、外部の機関に委託してもかまいません。社内の相談先は【相談窓口の名称】です。

この質問をしてくる社員は、二通りに分かれます。自分か同僚が困っていて相談できる先があるのかを確かめたい人と、社長や上司から「窓口は義務なのか調べてくれ」と言われた人です。前者には相談先と不利益を受けない根拠を、後者には義務の範囲と最低限そろえるものを答えます。

相談体制の整備が義務になるハラスメントの種類
パワハラセクハラ・妊娠出産等カスハラ・求職者等セクハラ
根拠の条文労働施策総合推進法31条1項男女雇用機会均等法11条1項・15条1項労働施策総合推進法33条1項
相談体制の整備事業主の義務事業主の義務事業主の義務
中小企業への適用2022年4月1日から業種・規模を問わず2026年10月1日から
言動をする側社内の上司や同僚社内の上司や同僚顧客や取引先、採用の担当者

出典:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」

答えるときに押さえること

1窓口の設置は法律上の義務で、会社の規模は関係ありません

労働施策総合推進法31条1項は、職場で行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによる就業環境の侵害を防ぐため、事業主に雇用管理上必要な措置を義務づけています。その中身は、社員からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の措置です。「体制の整備」の中身は厚生労働省の指針(令和2年厚生労働省告示第5号)で決まっていて、相談窓口をあらかじめ定め、社員に周知することが挙げられています。

この義務に会社の規模による線引きはありません。中小企業は2022年4月1日から義務の対象になりました。2022年3月31日までは努力義務だったので、当時の資料を見て「うちは努力義務のまま」と答えないようにします。セクハラは男女雇用機会均等法11条1項、妊娠・出産等に関するハラスメントは同法15条1項に同じ形の義務があります。

2窓口は担当者を決めるだけでも、外部に委託してもかまいません

指針は、相談窓口をあらかじめ定めていると認められる例として3つを挙げています。相談に対応する担当者をあらかじめ定めること、相談に対応するための制度を設けること、外部の機関に相談への対応を委託することです。専任の部署や委員会を作らなくても、担当者を決めて社員に知らせていれば足ります。社員が少ない会社で「立派な窓口は無理です」と相談されたときは、ここを伝えます。

外部委託を選ぶ場合も、担当者が相談を受けたあとに社内の人事部門と連携できる仕組みが必要です。指針は、担当者が適切に対応できるようにしている例として、担当者と人事部門が連携を図れる仕組みにすること、留意点を記載したマニュアルに基づいて対応すること、担当者に対応の研修を行うことを挙げています。

3窓口があるだけでは足りず、周知と事後の対応までが一組です

指針が義務づける措置は、窓口の設置だけではありません。次の7つが並びます。パワハラの内容とパワハラを行ってはならない方針を明確にして、管理監督者を含む社員に周知・啓発すること。行為者に対して厳正に対処する方針と対処の内容を、就業規則その他の服務規律を定めた文書に規定して周知・啓発すること。相談があったら事実関係を迅速かつ正確に確認すること。被害者への配慮と行為者への措置を適正に行うこと。再発防止の措置を講ずること。相談者と行為者のプライバシーを保護する措置を講じて、その旨を周知すること。相談したことを理由に解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定めて、周知・啓発すること。

窓口の受け方にも決まりがあります。指針は、パワハラが現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合や、パワハラに該当するか微妙な場合でも、広く相談を受け付けて適切に対応することを求めています。

4罰則はありませんが、勧告に従わないと公表されることがあります

窓口を作らないこと自体に罰金や拘禁刑の定めはありません。代わりに同法42条1項で、厚生労働大臣が法律の施行に関し必要があると認めるときは事業主に助言、指導、勧告ができることになっています。同条2項は、31条1項と2項に違反している事業主に勧告をして、勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができると定めています。

報告を求められたときの扱いは別です。同法45条1項に基づき、厚生労働大臣は31条1項と2項の施行に関し必要な事項について事業主に報告を求めることができます。同法51条は、この報告をせず、または虚偽の報告をした者を20万円以下の過料に処すると定めています。社員や経営層に「罰則がないから作らなくてよい」と伝えないようにします。

52026年10月1日から、カスハラと求職者等セクハラの窓口も義務になります

2025年6月11日に公布された労働施策総合推進法等の一部を改正する法律(令和7年法律第63号)で、顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)と、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が事業主の義務になりました。施行日は2026年10月1日です。カスハラについては同法33条1項に、相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備と、言動への対応の実効性を確保するための抑止の措置その他の雇用管理上必要な措置が定められています。

窓口を今から作る会社なら、パワハラ、セクハラ、妊娠・出産等、カスハラをまとめて受ける形にしておくと作り直しが要りません。指針も、これらは複合的に生じることが想定されるため、セクハラ等の相談窓口と一体にしてパワハラの相談窓口を設け、一元的に相談に応じられる体制を整えることが望ましいとしています。

自社の規程で確認すること

会社によって答えが変わる部分です。社員に答える前に確かめてください。

  • 自社の相談窓口の名称と連絡先(メール、電話、申込みフォームのどれか)
  • 窓口の担当者(人事部門か、専門の委員会か、外部の機関への委託か)
  • パワハラの禁止と懲戒を書いている就業規則の条文
  • 匿名での相談を受けるか、記録をどこまで残すか
  • 窓口の周知の方法(社内ポータル、入社時の説明、ポスターなど)

社内FAQに貼れる回答文例

【】の部分を自社の内容に書き換えて使えます。

回答文

Q. パワハラの相談窓口は会社に作る義務があるのですか。相談先はどこですか?

A. 相談窓口を定めて社員に周知することは、労働施策総合推進法31条1項に基づく事業主の義務です。業種や規模による線引きはなく、中小企業も2022年4月1日から対象になっています。当社の相談窓口は【相談窓口の名称】で、【窓口の連絡先】で受け付けています。セクシュアルハラスメントや、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの相談も同じ窓口で受けます。パワハラに当たるかはっきりしない段階でもご相談ください。厚生労働省の指針は、現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合や該当するか微妙な場合でも広く相談に応じるよう求めています。相談したことや、事実確認に協力して事実を述べたことを理由に、解雇その他の不利益な取扱いを受けることはありません(同法31条2項)。社内の窓口に相談しづらいときは、お住まいの地域の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)や総合労働相談コーナーにも相談できます。

続けて聞かれやすいこと

答えるときに間違えやすいこと

  • 「窓口を作ったので義務は果たした」とは言えません。窓口を定めることと社員に周知することが対なので、周知していなければ措置を講じたことになりません
  • 罰則がないことを「作らなくてよい」と伝えないようにします。勧告に従わなければ公表の対象になります(労働施策総合推進法42条2項)
  • 「パワハラかどうか微妙だから窓口の対象外」と断らないようにします。指針は、発生のおそれがある場合や該当するか微妙な場合でも広く相談に応じるよう求めています
  • 中小企業の義務化は2022年4月1日からです。それ以前の資料には努力義務と書いてあるので、古い社内資料をそのまま社員に見せないようにします
  • 外部の機関に委託した場合も、担当者が社内の人事部門と連携できる形にします。委託先で止まる作りだと、事後の対応の措置につながりません

出典

2026年10月9日時点で内容を確認しています。