退職した社員から退職証明書がほしいと言われたら

社員からはこう聞かれます
- 先月退職した者ですが、退職証明書をもらえますか?
- 転職先から、前の会社での在籍期間と仕事の内容がわかる書類を出すように言われました
- 離職票は届いたのですが、退職証明書も別に必要だと言われました
ひと言でいうと
退職した人から証明書を請求されたら、会社は遅滞なく交付しなければなりません(労働基準法22条1項)。書けるのは、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金、退職の事由の5つで、請求されていない項目は書きません。依頼は【退職者用の窓口】で受け付け、発行まで【日数】かかります。
退職証明書は、退職した人が転職先や提出先に、在籍していた期間や仕事の内容を示すために使います。労働基準法で交付が義務づけられているので、請求されたら断れません。一方で、本人が請求していない項目を書き足すことも禁じられています。何を書くかは、依頼を受けた時点で本人に確かめます。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)「労働基準法」「雇用保険法施行規則」「所得税法」
答えるときに押さえること
1請求されたら、遅滞なく交付する義務があります
退職した人が、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金、退職の事由について証明書を請求した場合、会社は遅滞なく交付しなければなりません(労働基準法22条1項)。退職の事由が解雇のときは、その理由も証明の対象に含まれます。この5つ以外の項目、たとえば人事評価や勤怠の記録は、退職証明書の対象ではありません。
何日以内という日数は法律に書かれておらず、「遅滞なく」とされています。社内では発行までの日数を決めておき、依頼を受けたときに伝えます。交付の義務に違反すると、30万円以下の罰金の対象です(同法120条1号)。
この請求権の時効は2年です(同法115条)。退職から2年を過ぎた依頼に応じる義務はありませんが、記録が残っていれば発行して差し支えありません。どこまで応じるかを先に決めておくと、窓口で迷わずに済みます。
2書く項目は、本人が請求したものだけに絞ります
証明書には、本人が請求していない事項を書いてはいけません(労働基準法22条3項)。「退職の理由は書かないでほしい」と言われたら、書かずに発行します。会社の判断で、頼まれていない退職の事由や処分の記録を足すことはできません。
依頼を受けたら、5つの項目のうちどれが必要かを本人に確かめます。提出先から書式を指定されていることもあるので、指定の有無も聞きます。賃金を書く場合は、どの時点の金額を書くか(退職時の月額か、直近1年の支給額か)を決めておきます。
再就職を妨げる目的で、第三者と示し合わせて本人の国籍や信条、社会的身分、労働組合運動について連絡を取ることや、証明書に秘密の記号を書き入れる行為も禁じられています(同法22条4項)。また、解雇を予告された社員が退職日までの間に解雇の理由の証明書を請求したときも、遅滞なく交付します(同法22条2項)。
3決まった様式はないので、会社の様式を作っておきます
退職証明書の様式は、法律では定められていません。会社の様式を1つ作っておき、請求された項目だけを載せて発行します。様式には、本人の氏名と生年月日、発行日、会社名と代表者名または部署名を入れ、社印を押すかどうかを決めておきます。
項目を固定した用紙を使うと、請求されていない欄まで埋めてしまいがちです。項目ごとに差し替えられる作りにするか、使わない項目の行は削って印字します。空欄のまま残すと、提出先に「書けない事情がある」と受け取られることがあります。
転職先が海外の会社で、英文の証明書を求められることもあります。英文で出すかどうかは会社の判断です。出す場合は、記載する項目を日本語の様式と同じにそろえ、訳し方を先に決めておきます。
4離職票や源泉徴収票とは別の書類です
離職票は、失業給付の手続きで本人がハローワークに出す雇用保険の書類で、交付するのは公共職業安定所長です(雇用保険法施行規則17条1項)。会社は、被保険者でなくなった事実のあった日の翌日から10日以内に、資格喪失届を事業所の所在地を管轄する公共職業安定所に出します。離職票を希望する人の分には、離職証明書を添えます(同規則7条1項、3項)。交付された離職票は、会社を通じて本人に渡すこともできます(同規則17条2項)。
源泉徴収票は、年の途中で退職した人には、退職の日以後1か月以内に交付します(所得税法226条1項)。退職金を支払った場合の源泉徴収票も同じ期限です(同条2項)。
離職票と源泉徴収票は、請求がなくても会社側での手続きが必要です。退職証明書だけが、請求を受けてから発行する書類です。「離職票を送ったので退職証明書は不要なはず」と判断せず、請求があれば発行します。
5退職した人から連絡を受ける道を用意しておきます
退職した人は、社内の申請システムにも会社のメールにもログインできません。退職の手続きの案内に、退職後の問い合わせ先(部署名、電話番号、社外から送れるメールアドレス)を入れておきます。
受け付けるときは、本人からの依頼かどうかを確かめます。生年月日や在籍していた部署など、記録と照らせる項目を聞く方法を決めておきます。家族や転職先の会社から依頼が来たときに答えるかどうかも、先に決めておきます。
渡し方は、郵送とPDFのどちらにするかを本人に聞きます。郵送なら送り先の住所を、PDFなら送り先のメールアドレスを確かめます。いつ誰にどの項目を証明したかを記録に残しておくと、同じ人から再発行を頼まれたときに確認できます。
自社の規程で確認すること
会社によって答えが変わる部分です。社員に答える前に確かめてください。
- 退職証明書の様式、社印を押すか、発行までの日数
- 退職した人からの依頼の窓口と、退職時に案内する連絡先
- 本人確認の方法と、本人以外からの依頼に答えるかどうか
- 賃金の項目を書くときに、どの時点の金額を書くか
- 退職から2年を過ぎた依頼に応じるかどうか
社内FAQに貼れる回答文例
【】の部分を自社の内容に書き換えて使えます。
Q. 退職後に、退職証明書を発行してもらえますか?
A. 【退職者用の窓口】までご連絡ください。労働基準法にもとづき、ご請求のあった項目について証明書を交付します。証明できるのは、在籍していた期間、業務の種類、その事業における地位、賃金、退職の事由の5つです。このうちどの項目が必要か、提出先と必要な部数、受け取り方法(郵送かPDFか)をお知らせください。ご請求のない項目は記載しません。提出先から書式を指定されている場合は、その書式もお送りください。ご本人からのご依頼であることを確かめるため、【本人確認の方法】をお願いしています。発行まで【日数】いただきます。
続けて聞かれやすいこと
退職証明書に、退職の理由は書かないでもらえますか?
書きません。証明書には本人が請求していない事項を記入できないので、退職の事由を求められていなければ記載しません。必要な項目だけをお知らせください。
離職票を受け取りましたが、退職証明書も出してもらえますか?
出せます。離職票は失業給付の手続きでハローワークに提出する雇用保険の書類で、交付するのはハローワークです。退職証明書は会社が交付する別の書類なので、両方が必要になることがあります。
3年前に退職しました。今からでも発行できますか?
労働基準法にもとづく請求権の時効は2年なので、2年を過ぎたご依頼にお応えする義務はありません。ただし記録が残っていれば発行できる場合があるので、【退職者用の窓口】にご相談ください。
答えるときに間違えやすいこと
- 本人が請求していない退職の事由や処分の記録を、会社の判断で書き足さないようにします
- 離職票や源泉徴収票を送ったことを理由に、退職証明書の請求を断ることはできません
- 退職した人は社内のシステムを使えないので、社外から連絡できる窓口を退職の手続きのときに案内しておきます