人事・労務

転勤の辞令は何日前に届くか聞かれたら

2026年10月8日に内容を確認

社員からはこう聞かれます

  • 転勤になるとしたら、どれくらい前に教えてもらえるんですか?
  • 内示って、引っ越しの何日前くらいに来るものですか?
  • 来月から異動と言われたんですが、こんなに急でいいんですか?

ひと言でいうと

転勤の辞令を何日前に出すかを定めた法律はなく、時期は会社の就業規則と運用で決まります。厚生労働省の手引きは、決まった転勤は対象の社員にできる限り時間的余裕をもって告知することが重要だとしています。自社では【内示から赴任までの期間】を目安とし、【辞令の通知方法】で伝えます。

異動の時期が近づくと、まだ対象になっていない社員からもこの質問が来ます。知りたいのは日数そのものではなく、引っ越しや家族の予定をいつから動かせるかです。自社の運用と、公的な手引きが示している考え方の両方を手元に置いておくと、同じ聞かれ方に短く答えられます。

転勤の辞令が届くまでの流れ
  1. 1会社異動の計画を作り、転勤の候補者を選ぶ
  2. 2会社候補者に打診し、育児や介護の事情を確認する
  3. 3社員赴任が難しい事情があれば申し出る
  4. 4会社時期や場所をずらせるか個別に検討する
  5. 5会社決まった転勤を本人に告知するできる限り時間的余裕をもって
  6. 6会社趣旨、役割、赴任旅費や単身赴任手当を説明する
  7. 7社員辞令を受け、赴任の準備に入る

出典:厚生労働省雇用均等・児童家庭局「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」

答えるときに押さえること

1日数を定めた法律はないので、まずそう伝えます

労働基準法にも育児・介護休業法にも、転勤の辞令を何日前に出すかという規定はありません。厚生労働省の手引き「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」は、転勤に言及している労働関係法令として育児・介護休業法26条と男女雇用機会均等法7条を挙げ、関係する規定として労働契約法3条を挙げていますが、予告の日数を定めたものはありません。

転勤を命じられる根拠は、就業規則の人事異動の定めです。厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)の8条は「会社は、業務上必要がある場合に、労働者に対して就業する場所及び従事する業務の変更を命ずることがある」と定め、3項で「前2項の場合、労働者は正当な理由なくこれを拒むことはできない」としています。この条文にも日数は出てきません。何日前になるかは、自社の就業規則と人事の運用で決まります。

2厚生労働省の手引きは「できる限り時間的余裕をもって」としています

同じ手引きは、最終的に決定された転勤について、対象となる社員にできる限り時間的余裕をもって告知することが重要だとしています。あわせて、上司や人事部門から、転勤の趣旨や転勤後に期待される役割とともに、赴任旅費や単身赴任手当などの諸条件について説明を行うことが望ましいとしています。社員が本当に知りたいのは引っ越しの段取りなので、告知のときに手当と旅費の話まで一度に出せると問い合わせが減ります。

手引きは、転勤の期間や本拠地に戻る可能性をある程度予測できる場合は、その目安を社員に示すことも挙げています。ただし目安であるという認識に食い違いが出ないよう、適切に対応することが望ましいとしています。手引きが引く中央大学ワーク・ライフ・バランス&多様性推進・研究プロジェクトのアンケート(平成28年11月)では、転勤内示の際に赴任期間を明示している企業は、国内赴任で9.0%、海外赴任で33.8%でした。目安を示していないこと自体は珍しくないので、社員にはその前提で答えます。

3育児や介護の事情がある社員には、会社に配慮の義務があります

育児・介護休業法26条は、就業の場所の変更を伴う配置の変更をしようとする場合の配慮を定めています。その変更により就業しつつ子の養育または家族の介護を行うことが困難となる社員がいるときは、その子の養育または家族の介護の状況に配慮しなければなりません。これは努力義務ではなく配慮の義務です。何日前に伝えるかの定めではありませんが、配慮をするには告知までに時間が必要になります。

配慮の中身は、同法に基づく指針(平成21年厚生労働省告示第509号)に例が挙がっています。社員の子の養育または家族の介護の状況を把握すること、本人の意向をしんしゃくすること、就業の場所が変わった場合の養育や介護の代替手段の有無を確認することです。手引きも、転勤の対象として候補になった時点で事情に変更がないかを確認し、事情が判明したら個別に対応できるか検討することを挙げています。社員から「何日前に分かるのか」と聞かれたときは、候補の段階で事情を聞く場があるかどうかもあわせて答えます。

42024年4月から、就業場所の「変更の範囲」を契約時に示しています

改正労働基準法施行規則5条1項1号の3により、2024年4月1日以降に労働契約を結ぶ社員と、有期労働契約を更新する社員には、明示する事項が増えました。雇入れ直後の就業場所と業務に加えて、就業場所と業務の「変更の範囲」を書面で明示することになっています。厚生労働省の資料は、配置転換や在籍型出向が命じられた際の配置転換先や出向先の場所は「変更の範囲」に含まれる一方、臨時的な他部門への応援業務や出張、研修のような一時的な変更先は含まれないとしています。

転勤の時期を聞かれたときは、その社員の労働条件通知書に書いた変更の範囲を一度見ます。「会社の定める営業所」のように広く書いているか、「愛知県内」のように限定しているかで、答えられる範囲が変わります。範囲を限定して明示している社員に、それを超える場所への転勤を伝えると、日数より先にそこを説明することになります。明示が必要なのは2024年4月1日以降に契約を結んだか更新した社員なので、それ以前からの社員は記載がないこともあります。

5答える順番は、法律の有無、自社の運用、本人の事情の3つです

まず「法律で何日前という決まりはありません」と伝えます。次に自社の運用を言います。過去の異動で内示から赴任までが何週間だったかを人事で把握していれば、それがいちばん具体的な答えになります。定めていない会社は「決まった目安はありませんが、決まりしだいお伝えします」と言い切ったほうが、あいまいに答えて後で違う日数になるより問い合わせが減ります。

3つめは本人の事情です。質問してきた社員に育児や介護の事情があるなら、その場で聞いておきます。転勤が決まってから聞くのでは、育児・介護休業法26条の配慮をする時間がありません。手引きも、その後の状況の変化で転勤の期間などが目安に沿わないと見込まれる場合は、できる限り早い段階で改めて説明することが望ましいとしています。

自社の規程で確認すること

会社によって答えが変わる部分です。社員に答える前に確かめてください。

  • 内示から赴任日までの期間の目安(就業規則や人事の運用で決めているか)
  • 内示を口頭で伝えるか、辞令書を交付するか。伝える人は上司か人事か
  • 内示の前に本人へ打診する手順があるか
  • 赴任旅費、単身赴任手当、社宅や住宅の手当の内容と、申請の期限
  • 育児や介護の事情で転勤の時期をずらす、または免除する申告の仕組みがあるか
  • 労働条件通知書に書いた就業場所の「変更の範囲」の記載

社内FAQに貼れる回答文例

【】の部分を自社の内容に書き換えて使えます。

回答文

Q. 転勤の辞令は何日前に届きますか?

A. 転勤の辞令を何日前に出すかを定めた法律はありません。時期は会社の就業規則と運用で決まります。当社では【内示から赴任までの期間】を目安にしており、【辞令の通知方法】でお伝えします。内示のときは、転勤の趣旨と赴任後の役割に加えて、赴任旅費と単身赴任手当などの条件もあわせてご説明します。お子さんの養育やご家族の介護の事情で赴任の時期に支障があるときは、転勤が決まる前の段階でご相談ください。会社には、就業場所の変更によって育児や介護が難しくなる社員について、その状況に配慮する義務があります(育児・介護休業法26条)。ご相談は【相談窓口】で受け付けます。

続けて聞かれやすいこと

答えるときに間違えやすいこと

  • 「法律で1か月前です」と答えてしまわないようにします。転勤の予告日数を定めた規定はありません
  • 解雇予告の30日前と混同しないようにします。労働基準法20条は解雇の規定で、転勤には及びません
  • 育児や介護の事情は、本人の申し出を待つだけにしないようにします。育児・介護休業法26条の配慮には、状況の把握と本人の意向のしんしゃくが例として挙がっています
  • 内示の段階で結論を固めてしまうと、配慮をしていないと見られます。候補の段階で事情を確認する場を先に置きます
  • 労働条件通知書に書いた就業場所の「変更の範囲」を超える転勤は、日数の前にその点の説明が必要になります
  • 「できる限り時間的余裕をもって」は厚生労働省の手引きの考え方で、罰則のある決まりではありません。法律上の義務として伝えないようにします

出典

2026年10月8日時点で内容を確認しています。