家族の介護で休みたいと相談されたら

社員からはこう聞かれます
- 親が入院して、退院後に介護が必要そうなんです。会社を休めますか?
- 介護休業ってどれくらい取れますか?その間の給料はどうなりますか?
- 週に何日か、親の通院に付き添いたいんですが、有給を使うしかないですか?
ひと言でいうと
介護休業は、対象家族1人につき通算93日まで、3回に分けて取れます。通院の付き添いのような短い休みは介護休暇(1年度に5日、対象家族が2人以上なら10日)で対応できます。制度と受け取れるお金を説明しますので、面談の日程を決めさせてください。
介護の相談をしてくる社員は、いつまで休めるのか、休んでいる間の収入はどうなるのか、そして仕事を続けられるのかを気にしています。相談の時点では、要介護認定も受けていないことがほとんどです。2025年4月から、介護に直面した社員から申出を受けた会社は、制度を個別に知らせて意向を確認することが義務になりました。相談を受けたら、まず面談の場を作ります。
- 1社員介護に直面したことを会社に申し出る
- 2会社制度と給付金を個別に知らせ、意向を確認する
- 3社員介護休業の申出書を提出する開始の2週間前まで
- 4会社休業開始時賃金月額証明書をハローワークに出す
- 5会社復帰後の働き方を面談で決める93日以内
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」
答えるときに押さえること
1介護の申出を受けたら、制度を個別に知らせて意向を確認します
社員から「家族の介護が必要になった」という申出があったら、会社は介護休業と介護両立支援制度等の内容、申出先、介護休業給付金のことを個別に知らせます。あわせて、利用する意向があるかを確認しなければなりません(育児・介護休業法21条4項)。方法は面談か書面の交付で、社員が希望すればFAXや電子メールも使えます。面談はオンラインでもかまいません。取得を控えさせるような伝え方は認められません。
あわせて、社員が40歳に達する年度などの早い段階でも、同じ内容の情報を提供する義務があります。相談を受けてから資料を探すことにならないよう、説明用の資料と申出書の書式を先に用意しておきます。
2介護休業は通算93日まで、3回に分けて取れます
介護休業は、要介護状態にある対象家族1人につき、通算93日まで取れます。3回まで分けられるので、入院の付き添いと、施設を探す時期と、退院の前後というように分けて使えます(育児・介護休業法11条、15条)。会社は申出を拒めません(同12条1項)。労使協定で継続して雇用された期間が1年未満の社員などを除外している場合だけが例外です。
申出は、休業を始めたい日の2週間前までに出してもらいます。これより遅い申出のときは、会社が申出の翌日から2週間以内の日を開始日として指定できます(同12条3項)。期間を定めて雇用されている社員も、開始予定日から93日を経過する日から6か月を経過する日までに契約が終わることが明らかでなければ申し出られます。
厚生労働省は、介護休業を「仕事と介護を両立させるための体制を整えるための期間」と説明しています。社員が自分で介護を抱え込む期間ではないことを、面談で伝えておきます。
3通院の付き添いなど短い休みは、介護休暇で受けます
介護休暇は、1年度に5日(対象家族が2人以上なら10日)取れます。年次有給休暇や介護休業とは別枠で、1日単位のほか、時間単位でも取れます(育児・介護休業法16条の5)。年度は、会社が別に定めなければ4月1日に始まって翌年3月31日に終わります。
2025年4月から、労使協定で「継続して雇用された期間が6か月未満の社員」を除外する仕組みは廃止されました。労使協定で除外できるのは、週の所定労働日数が2日以下の社員だけです。入社して間もない社員から相談があったときは、自社の労使協定が古いままになっていないかを確認します。
4休業中の収入は、雇用保険の介護休業給付金で支えます
介護休業中に会社が給与を支払うかどうかは、就業規則などの規程によります。給与が出ない期間は、雇用保険から介護休業給付金が出ます。額は、休業開始時賃金日額に支給日数を掛けた額の67%です。同じ家族について93日、3回までが限度です。
賃金月額には上限があり、546,600円を超えるときは546,600円で計算します。この場合の1か月あたりの給付金の上限は366,222円です。これらの額は毎年8月1日に変わるので、案内する前にハローワークのページで確かめます。休業中に休業前の8割以上の賃金が支払われていると支給されません。就業した日数が1か月ごとの期間で10日を超える場合も対象外です。申請はハローワークに出します。
社会保険料の免除は、産前産後休業と3歳未満の子の育児休業等の期間の制度です。介護休業は対象ではないので、休業中も健康保険と厚生年金保険の保険料がかかります。給与が出ない月の保険料をどう受け取るかを、休業に入る前に決めておきます。
5働きながら介護を続けるための制度も、同じ面談で伝えます
介護は93日で終わるものではないので、休業のあとに働き方を変える制度もあわせて説明します。会社は、介護のための所定労働時間の短縮等の措置を、連続する3年以上の期間について設けなければなりません(育児・介護休業法23条3項)。短時間勤務、フレックスタイム制、時差出勤、介護サービスの費用の助成のいずれかです。
請求できる制度もあります。残業の免除(所定外労働の制限)は、1か月以上1年以内の期間について請求できます。時間外労働の制限は、1か月24時間・1年150時間を超えて働かせないよう請求できます。深夜業の制限は1か月以上6か月以内です。いずれも開始予定日の1か月前までに請求してもらいます。介護のためのテレワークを選べるようにすることは、2025年4月から会社の努力義務になりました。
会社ができるのは働き方の調整までです。介護そのものの相談先は、市区町村の窓口と地域包括支援センターだと伝えます。要介護認定は市区町村の窓口に申請し、認定結果は原則として申請から30日以内に通知されます。
自社の規程で確認すること
会社によって答えが変わる部分です。社員に答える前に確かめてください。
- 介護の申出を受ける窓口と、面談を担当する部署
- 介護休業・介護休暇の申出書の書式と提出先
- 介護休業中の給与と賞与の扱い、保険料の本人負担分をどう受け取るか
- 介護休暇が有給か無給か
- 介護休暇の年度の起算日(4月1日以外にしているか)
- 労使協定で除外している社員の範囲(2025年4月の改正に合わせて直したか)
- 所定労働時間の短縮等の措置として会社が設けている制度
- 介護のためのテレワークを認めるかどうか
社内FAQに貼れる回答文例
【】の部分を自社の内容に書き換えて使えます。
Q. 家族の介護が必要になったとき、休むことはできますか?
A. 【相談窓口】に、家族の状況と休みたい期間の希望を伝えてください。【担当部署】から面談の日程を連絡し、使える制度と受け取れるお金を説明します。まとまった期間休むときは介護休業を使います。対象家族1人につき通算93日まで、3回に分けて取れます。申出は【書式名】で、休業を始めたい日の2週間前までに【提出先】へ出してください。通院の付き添いなど短い休みには介護休暇があり、1年度に5日(対象家族が2人以上なら10日)まで、時間単位でも取れます。介護休業中は、雇用保険から休業開始時の賃金の67%にあたる介護休業給付金を受け取れます(要件と上限があります)。休業のあとも、残業の免除や【短時間勤務等の制度名】を使えます。介護そのものの相談は、お住まいの市区町村の窓口か地域包括支援センターへどうぞ。
続けて聞かれやすいこと
祖父母や兄弟の介護でも、介護休業は取れますか?
育児・介護休業法の対象家族は、配偶者(事実婚を含みます)、父母、子、配偶者の父母です。雇用保険の介護休業給付金は、これに祖父母、兄弟姉妹、孫を加えた範囲を対象としています。会社の規程で対象を広げていることもあるので、自社の就業規則を確認してから答えます。
要介護認定を受けていなくても、介護休業は取れますか?
取れます。法律でいう要介護状態は、負傷や疾病、身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上にわたって常時介護を必要とする状態です。介護保険の要介護認定とは別の判断なので、認定の結果を待つ必要はありません。
93日を使い切ったあとは、どうすればいいですか?
介護休暇(1年度に5日、対象家族が2人以上なら10日)、残業の免除、時間外労働と深夜業の制限、所定労働時間の短縮等の措置が使えます。短縮等の措置は連続する3年以上の期間について設けられているので、休業を使い切ったあとの働き方をこちらで組み立てます。
介護休業の間、給付金はもらえますか?
雇用保険の介護休業給付金があります。申請は原則として会社がハローワークに行い、金額は休業開始時賃金日額に支給日数を掛けた額の67%です。同じ家族について93日、3回までが限度です。
詳しくは「介護休業給付金の申請方法を聞かれたら」をご覧ください。
答えるときに間違えやすいこと
- 介護休業の申出は原則として拒めません。断れるのは、労使協定で継続して雇用された期間が1年未満の社員などを除外している場合だけです
- 介護休暇の労使協定が2025年4月の改正前のままだと、継続雇用6か月未満の社員を誤って断ってしまいます
- 介護休業には、育児休業のような社会保険料の免除がありません。休業中の保険料の扱いを先に決めておきます
- 介護の相談は、社員が誰にも言えずに抱えていることが多いので、相談内容を本人の同意なく職場に共有しません