取引先への支払日を聞かれたら

社員からはこう聞かれます
- 先方から「この請求書はいつ払われますか」と聞かれたんですが、どう答えればいいですか?
- 先月納品してもらった分の支払いは、いつになりますか?
- 取引先が急ぎで入金してほしいと言っています。早められますか?
ひと言でいうと
中小受託取引適正化法(旧 下請法)の対象になる取引では、品物や成果物を受け取った日から起算して60日以内に支払期日を定めなければなりません。対象にならない取引の支払日は、契約書や注文書の支払条件で決まります。社員には【支払条件の確認先】で条件を調べたうえで、具体的な日付で答えてもらいます。
支払日の問い合わせは、営業や発注した部署が取引先から聞かれて、そのまま経理に回してくるものが多いです。社員は「月末払いです」と答えてよいか迷っていて、取引先ごとに支払条件が違うことを知らないまま答えてしまうこともあります。2026年1月1日に下請代金支払遅延等防止法が中小受託取引適正化法に変わり、支払期日の決め方にも手が入りました。
- はい支払期日は受け取った日から60日以内に定めてあるか
- はい支払条件どおりの支払日を案内する
- いいえ支払条件の見直しを決裁者に上げる
- はい
- いいえ契約書か注文書の支払条件で答える
出典:公正取引委員会「取適法の概要」
答えるときに押さえること
1答える前に、その取引先の支払条件を調べてもらう
支払日を聞かれたとき、最初に見るのは契約書か注文書の支払条件です。「毎月末日締切、翌月25日支払」のように、締め日と支払日の組み合わせで書かれていることが多いです。
支払条件は取引先ごとに違うので、営業担当の記憶ではなく、取引先ごとの台帳か会計システムの登録内容で確かめます。社内FAQには、どこを見れば支払条件が分かるかを先に書きます。支払日が土日や祝日に当たったときに前と後のどちらへずらすかも、取引先との取り決めに書いてあるので、あわせて確かめます。
2取引先が中小の会社や個人事業主なら、法律の上限がかかる
中小受託取引適正化法(取適法)の対象になるかは、委託する側と受ける側の規模の組み合わせで決まります。対象になる取引は、物品の製造委託、修理委託、情報成果物の作成委託、役務の提供委託、特定運送委託の5つです。2026年1月1日から、下請代金支払遅延等防止法がこの名前に変わり、「親事業者」は「委託事業者」、「下請事業者」は「中小受託事業者」という呼び方になりました。
物品の製造委託、修理委託、特定運送委託は、委託する側の資本金が3億円を超え、受ける側が個人か資本金3億円以下のときに対象です。委託する側の資本金が1千万円を超え3億円以下で、受ける側が個人か資本金1千万円以下のときも対象になります。情報成果物の作成委託と役務の提供委託は、5千万円と1千万円が区切りです。
2026年1月1日からは、資本金ではなく常時使用する人数で判断する区分も加わりました。製造委託等は300人、情報成果物の作成委託と役務の提供委託は100人が区切りです。相手の規模だけでなく、自社がどの区分に入るかも確かめます。
360日の起算日は、請求書が届いた日ではない
取適法の対象になる取引では、支払期日は品物や成果物を受け取った日から起算して60日の期間内、かつできる限り短い期間内に定めなければなりません(第3条第1項)。検査をするかどうかは関係ありません。請求書が届いた日や社内の締め日から数えるものだと思い込みやすいところです。
支払期日を定めなかったときは、受け取った日が支払期日とみなされます。60日を超える支払期日を定めたときは、受け取った日から起算して60日を経過した日の前日が支払期日とみなされます(第3条第2項)。公正取引委員会のよくある質問では、「毎月末日納品締切、翌月○日支払」のように具体的な支払日が特定できる形で定めることが求められています。締め日と支払日で決めるときも、受け取った日から数えて60日に収まるかを確かめます。
4支払いが遅れると、年14.6%の遅延利息がつく
支払期日までに払わなかったときは、受け取った日から起算して60日を経過した日から実際に支払う日までの日数に応じて、未払額に年14.6%を掛けた金額を遅延利息として払わなければなりません(第6条第1項、令和7年公正取引委員会規則第9号)。
社員から「少し遅れても大丈夫ですか」と聞かれたら、遅れた日数分の利息が別に発生することと、公正取引委員会の勧告の対象になることを伝えます。支払いが間に合わないと分かった時点で【支払いの決裁者】に上げてもらう流れにしておきます。
5手形を渡しても、満期日が後なら支払ったことにならない
取適法では、支払期日を過ぎても代金を払わないことが禁じられていて、手形を交付することもここに含まれます(第5条第1項第2号)。公正取引委員会のよくある質問では、手形の満期日を実際に支払う日として扱うため、満期日が支払期日より後に来る手形は支払遅延にあたると説明されています。改正前の下請法では、支払期日までに金融機関の割引を受けることが難しい手形を渡すことが禁じられていました。2026年1月1日からは、手形で払うこと自体が支払遅延の扱いになります。
手形で払っている取引先が残っていれば、支払条件の見直しを【支払条件を決める人】に相談します。支払期日までに同じ額の現金に換えることが難しい支払手段も、同じ扱いです。
自社の規程で確認すること
会社によって答えが変わる部分です。社員に答える前に確かめてください。
- 取引先ごとの支払条件(締め日と支払日)を確かめる場所
- 請求書を受け付ける社内の締め日と、支払いの処理をする日
- 支払いの方法(銀行振込、手形の有無)
- 支払日を早めることや、支払条件を変えることを決める人
- 支払いが間に合わないと分かったときの社内の連絡先
- 支払日が土日や祝日に当たったときに前後どちらへずらすか
社内FAQに貼れる回答文例
【】の部分を自社の内容に書き換えて使えます。
Q. 取引先から「この請求書はいつ払われますか」と聞かれました。どう答えればいいですか?
A. 支払日は取引先ごとの支払条件で決まります。【支払条件の確認先】でその取引先の締め日と支払日を確かめてから、具体的な日付でお答えください。
届いた請求書は【請求書の受付窓口】に【社内の締め日】までに回してください。締め日に間に合わないと、支払いが次の支払日に回ります。
支払いを早めてほしい、支払条件を変えてほしいと言われたときは、その場で約束せず【支払条件を決める人】に相談してください。支払いが間に合わないと分かったときも、同じ窓口に早めに連絡してください。
続けて聞かれやすいこと
取引先から支払いを早めてほしいと言われました。応じてよいですか?
支払日を早めること自体を禁じる決まりはありません。ただし資金の予定が変わるので、その場で約束せず【支払条件を決める人】の判断を仰ぎます。早める見返りに代金を割り引く形にはしません。取適法では、受ける側に責任がないのに代金の額を減らすことが禁じられています(第5条)。
請求書が届くのが遅れました。支払日はずれますか?
取適法の対象になる取引では、60日を数える起算日は品物や成果物を受け取った日なので、請求書が遅れても支払期日は動きません。社内の締め日に間に合わないときは【請求書の受付窓口】に先に連絡してもらい、支払いの手続きを間に合わせます。
取引先が個人事業主です。取適法の対象になりますか?
個人の事業者は、自社の資本金が区分を超えていれば中小受託事業者にあたります。物品の製造委託、修理委託、特定運送委託は自社の資本金が1千万円超、情報成果物の作成委託と役務の提供委託も1千万円超が区切りです。相手が個人かどうかではなく、自社の資本金から確かめます。
答えるときに間違えやすいこと
- 60日の起算日を、請求書が届いた日や社内の締め日と考えてしまう
- 支払条件を「月末締め翌々月払い」のように決めて、60日を超えていることに気づかない
- 手形を渡した日を支払った日と考えてしまう。満期日が支払期日より後なら支払遅延になる
- 取適法の対象かどうかを取引先の規模だけで判断し、自社の資本金や人数の区分を確かめていない
- 社員がその場で支払日を約束してしまい、支払条件と違う日を伝えてしまう