台風や大雪の日に出社すべきか聞かれたら

社員からはこう聞かれます
- 明日は台風が来るらしいんですが、出社したほうがいいですか?
- 電車が止まったら休んでいいですか。その日は欠勤になりますか?
- 大雪で危ないので休みたいんですが、有給を使うことになりますか?
ひと言でいうと
台風や大雪の日に出社するかどうかを定めた法律の規定はなく、出社・在宅勤務・休業のどれにするかは会社が決めて社員に伝えます。会社の判断で休業にした日は、事業場の施設・設備が直接の被害を受けた場合を除き、平均賃金の6割以上の休業手当がいります。【判断を伝える手段】と【判断を伝える時刻】を案内します。
台風や大雪の日の出社を聞いてくる社員は、無理に出社すべきなのかと、休んだら給与が減るのかを同時に気にしています。「各自で判断してください」と返すと、賃金の扱いまで人によって変わります。会社として決めた内容と、休んだ日の賃金の扱いまで一度に伝えます。
- はい事業場の施設・設備が直接の被害を受けたか
- はい休業手当の支払義務はないと説明する
- いいえ平均賃金の6割以上の休業手当を案内する
- はい
- いいえ社員が自分の判断で出社を控えるか
- はい欠勤と年次有給休暇のどちらにするか選んでもらう
- いいえ在宅勤務か時差出勤に切り替えられるかを案内する
- はい
出典:厚生労働省「自然災害時の事業運営における労働基準法や労働契約法の取扱いなどに関するQ&A」
答えるときに押さえること
1出社するかどうかは会社が決めて伝えると答えます
台風や大雪の日に出社するかどうかを定めた法律の規定はありません。出社・在宅勤務・休業のどれにするかは会社が決めます。
判断の材料になるのは、気象庁の情報と鉄道の運行の見通しです。気象庁は防災気象情報を、注意報、警報、危険警報、特別警報の順に重大さで区分しています(2026年10月時点)。特別警報は、予想される現象が特に異常であるため重大な災害の起こるおそれが著しく大きいときに出されます。
労働契約法5条は、使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとすると定めています。暴風や大雪の中で出社を求めるかどうかは、この配慮の中で考えます。
2会社が休業にした日の賃金を説明します
労働基準法26条は、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、使用者は休業期間中の社員にその平均賃金の100分の60以上の手当を払わなければならないと定めています。平均賃金は、算定すべき事由が発生した日以前3か月間に払った賃金の総額を、その期間の総日数で割った金額です(同法12条1項)。
天災事変等の不可抗力による休業は、使用者の責に帰すべき事由に当たらず、休業手当の支払義務はありません。厚生労働省のQ&Aは、ここでいう不可抗力を、その原因が事業の外部より発生した事故であること、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たすものと解しています。
同じQ&Aは、災害で事業場の施設・設備が直接的な被害を受けて休業する場合は、原則として使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しないとしています。一方、施設・設備が直接的な被害を受けていない場合は、原則として該当すると考えられ、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、代替手段の可能性、休業を避けるための具体的な努力などを総合的に勘案して判断するとされています。
建物も設備も無事なまま、会社が「危ないので休みにします」と決めた日は、休業手当がいる前提で考えます。
3社員が自分で休むと決めた日の扱いを答えます
通常どおりの勤務とした日に社員が自分の判断で出社しなかった場合、働いていない時間の賃金は発生しません。休業手当は会社が休業にしたときの話なので、この場合は当たりません。欠勤にするか、年次有給休暇を使うかを社員に選んでもらいます。
年次有給休暇は、社員が請求する時季に与えなければなりません(労働基準法39条5項)。会社が「今日は有給にしておく」と一方的に決めることはできません。社員から請求があったのに、災害の日だからと断ることもできません。
電車が止まって遅刻した場合も、遅れた時間の賃金は発生しないのが原則です。本人に避けようのない理由なので、遅刻の回数に数えない、時間単位の年次有給休暇を使えるようにするなど、扱いを決めている会社もあります。打刻を忘れたと言われたらと同じく、当日に個別に相談されない形を先に作っておきます。
4出社を求めるときに確かめることを伝えます
出社してもらう場合は、通勤の途中でけがをしたときの扱いを押さえます。労災保険の通勤災害は、社員が就業に関し、住居と就業の場所との間の往復などの移動を、合理的な経路及び方法により行う場合が対象です(労働者災害補償保険法7条1項3号・2項)。路線が止まって別の経路や手段に変えたときも、その状況で合理的といえる経路と方法であれば対象になります。
鉄道が計画運休を出した日は、運転再開の直後に駅と車両が混雑します。国土交通省は、運転再開後しばらくは輸送力が限られることから、時差出勤やテレワークによる需要の抑制も必要だとして、企業にあらかじめ社内のルールを決めておくよう求めています。出社の時刻をずらす、在宅勤務に切り替える、業務の開始を遅らせるという選択肢を、当日ではなく前もって用意しておきます。
5判断を伝える手段と時刻を決めておきます
災害の日に迷いが出るのは、判断の中身よりも、誰がいつ知らせるかが決まっていないからです。国土交通省が公表した調査では、通勤先で台風や地震の際の通勤に関するルールが「事前には決められていないし連絡が来るかも決まっていない」という回答が40.3%で一番多く、計画運休が実施された台風のときに「特に指示・連絡はなかった」という回答が26%ありました。
決めることは4つです。判断する人、判断を伝える時刻、伝える手段、連絡がつかないときの既定の扱いです。
伝える手段は、社員が自宅から見られるものを1つに決めます。社内のシステムにしか置かないと、在宅勤務で社内のシステムに入れないと言われたらと同じ状態になり、入れない人に届きません。連絡がつかないときは自宅待機とし、出社しなくても欠勤にしない、のように既定の扱いまで書いておくと、当日の問い合わせが減ります。
自社の規程で確認すること
会社によって答えが変わる部分です。社員に答える前に確かめてください。
- 出社・在宅勤務・休業を判断する人は誰か
- 判断を伝える時刻(前日の夕方か当日の朝か)と、伝える手段
- 連絡がつかないときの既定の扱い
- 会社が休業にした日の賃金の扱い(休業手当か、それより有利な定めがあるか)
- 遅刻の扱いと、在宅勤務や時差出勤に切り替えられる職種
社内FAQに貼れる回答文例
【】の部分を自社の内容に書き換えて使えます。
Q. 台風や大雪のときは、出社したほうがいいですか。休んだら給与はどうなりますか?
A. 出社するか、在宅勤務にするか、休業にするかは会社が決めて、【判断を伝える手段】でお知らせします。前日の夕方までに一次の案内、当日の【判断を伝える時刻】までに最終の判断をお送りします。
会社が休業にした日は、事業場の施設・設備が直接の被害を受けた場合を除き、平均賃金の6割以上の休業手当をお支払いします。この日に年次有給休暇を充てることはしません。
通常どおりの勤務とした日にご自身の判断でお休みになる場合は、欠勤と年次有給休暇のどちらにするかをお選びください。年次有給休暇はご本人の請求で取得するものです。
電車が止まって遅れた場合は、【遅刻の扱い】のとおりに処理します。出社の途中でけがをされたときは、その日のうちに【労災の連絡先】までご連絡ください。
【判断を伝える手段】に連絡が届かないときは、自宅待機としてください。出社しなくても欠勤にはしません。
続けて聞かれやすいこと
会社が休業にした日は、有給休暇を使うことになりますか?
会社が決めた休業に年次有給休暇を充てることはできません。年次有給休暇は社員が請求する時季に与えるものです(労働基準法39条5項)。会社が休業にした日は、事業場の施設・設備が直接の被害を受けた場合を除き、平均賃金の6割以上の休業手当を払う前提で考えます。社員の希望で年次有給休暇にするなら、本人の請求として記録を残します。
詳しくは「有給休暇の申請方法を聞かれたら」をご覧ください。
出社の途中で転んでけがをしたら、労災になりますか?
住居と就業の場所との間の往復を、合理的な経路及び方法で行っている間のけがは、通勤災害として労災保険の給付の対象になります(労働者災害補償保険法7条1項3号・2項)。路線が止まって別の経路や手段に変えた場合も、その状況で合理的といえるなら対象です。経路を逸脱し、または移動を中断した間とその後の移動は、通勤に当たりません(同条3項)。けがをしたら、その日のうちに知らせてもらいます。
これまで災害の日の休業でも給与を全額払ってきました。今年から休業手当だけにできますか?
できません。労働契約や労働協約、就業規則、労使慣行に基づいて従来払ってきた賃金や手当を、災害に伴う休業について払わないとすることは、労働条件の不利益変更に当たります。社員との合意など、適法な変更手続をとらずに取扱いを変更することはできないとされています。労働基準法26条の休業手当は最低の労働条件で、これまでの定めを上書きするものではありません。
答えるときに間違えやすいこと
- 建物も設備も無事なまま会社の判断で休業にした日は、原則として「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たり、平均賃金の6割以上の休業手当がいります
- 不可抗力に当たるかは、事業の外部より発生した事故であることと、通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けられない事故であることの2つを満たすかで見ます
- 会社が休業にした日に、社員の年次有給休暇を一方的に充てることはできません。年次有給休暇は社員が請求する時季に与えるものです(労働基準法39条5項)
- これまで災害の日の休業に賃金や手当を払ってきた会社が、今回から払わないとすることは労働条件の不利益変更に当たります