仕事で使うネットのサービスを会社のお金で契約してよいか聞かれたら

社員からはこう聞かれます
- 作業が楽になるツールを見つけたんですが、会社の経費で契約できますか?
- 月1,500円くらいのサービスなんですが、自分のカードで払って精算してもいいですか?
- 無料で試していたツールが期限切れになりそうです。有料にしていいですか?
ひと言でいうと
月額のネットのサービスを会社の費用で契約するかは会社の決めごとで、多くの会社は契約の名義と、申し込む前の承認の手順を決めています。【申請方法】で、サービス名、使う目的、料金、そのサービスに置く情報を書いて申請してもらい、承認が出るまで自分の名義で契約しないよう伝えます。
ファイル変換、議事録の文字起こし、デザインのツールなど、月額のネットのサービスを使いたいという相談は、現場で仕事が詰まっているときに来ます。社員が気にしているのは、申請が通るかどうかと、間に合うかどうかです。自分のカードで先に払ってしまってよいかも、よく一緒に聞かれます。
- はい今あるサービスの権限を渡す
- いいえ顧客の情報や社員の個人情報をそのサービスに置くか
- はい情シスが情報の重要度と契約条件を確認したか
- はい会社名義での契約を申請してもらう
- いいえ情シスの確認を先に依頼する
- はい
- いいえ会社名義での契約を申請してもらう
- はい
答えるときに押さえること
1同じ用途のサービスを会社が契約していないか先に確かめる
最初に見るのは、やりたいことが今あるサービスでできないかです。会社で契約しているサービスに同じ機能が入っていて、使える権限を渡すだけで済むことがよくあります。
契約しているサービスと、誰が使えるかを一覧にしておくと、この確認が数分で終わります。一覧がない会社では、まず請求書とカードの明細から、毎月払っているサービスを書き出すところから始めます。同じ用途のサービスを部署ごとに別々に契約していると、費用が重なるうえ、退職した人のアカウントが残りやすくなります。
2契約の名義は会社にして、個人のアカウントで始めない
社員が自分のメールアドレスとカードで契約すると、支払いは精算できても、契約そのものは個人に残ります。その人が異動や退職をしたときに、データの取り出しも引き継ぎもできません。解約の連絡も本人しかできません。
申し込みは会社のメールアドレスで行い、支払いは会社のカードか請求書払いにしてもらいます。会社のカードを貸せるかどうかは、カードの貸与の条件で決まります。どうしても個人で立て替える場合は、アカウントの名義を会社のメールアドレスに変えてもらい、支払い方法もあとで会社のものに切り替える前提で認めます。
3そのサービスに置く情報によっては、情シスの確認を先に通す
料金が安いサービスでも、顧客の名簿や社員の個人情報を置くなら、確認する項目は増えます。IPAの「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」では、取り扱う情報の重要度、管理する担当者を決めること、使える人の範囲が、確認する項目に挙げられています。利用が終わったときのデータの扱いと、データが保存される国も、同じ一覧に入っています。
申請の様式に「そのサービスに置く情報」の欄を作っておくと、情シスの確認が要るかどうかを担当者が判断できます。社内の資料を読み込ませるAIのサービスは、入れた内容が学習に使われるかどうかで扱いが変わるので、設定の画面と利用規約の記載まで見てもらいます。
4支払い方法と自動更新を、申し込む前に決める
月額のサービスは、解約するまで毎月引き落とされます。申請の時点で、いつまで使うのか、誰が更新を見るのかを決めておきます。使う人が1人だけのサービスは、その人が異動したときに支払いが続きやすいので、契約した部署と担当者を記録します。
領収書は郵送されず、サービスの画面からダウンロードする形がほとんどです。クラウドサービスから受け取った請求書や領収書のデータは電子取引に当たるので、印刷して紙で保管するのではなく、データのまま保存してもらいます。紙に印刷したものだけを提出させると、保存方法が要件を満たしません。
5年払いと海外のサービスは、経理の処理が変わる
年払いを選ぶと1回の金額は下がりますが、払った時点ではまだ受けていない分が含まれます。1年以内に提供を受ける分の前払費用は、その金額を継続して支払った事業年度の損金にしているときは、支払った時点で損金にできます(国税庁 No.5380)。この扱いを使っていない会社では期間で分けるので、年払いにしてよいかは経理の判断を挟みます。
海外の会社のサービスでも、インターネットを通じて国内の事業者が受けるものは、国内取引として消費税の対象になります。そのうち広告の配信のように、受ける相手が通常は事業者に限られるものは、受け取った国内の会社が「特定課税仕入れ」として申告します(リバースチャージ方式)。ただし一般課税で、その課税期間の課税売上割合が95パーセント以上の場合などは、当分の間、特定課税仕入れはなかったものとされます。ドル建ての請求書が出てきたら、社員に判断させず経理で引き取ります。
自社の規程で確認すること
会社によって答えが変わる部分です。社員に答える前に確かめてください。
- ネットのサービスを契約するときの申請方法と、承認する人
- 情シスの確認が要る金額や、置く情報の範囲
- 支払い方法(会社のカード、請求書払い、立替を認めるか)
- 年払いを認めるか、認める場合の上限額
- 契約したサービスの一覧をどこで管理するか
- 使う人が異動や退職するときの、解約と引き継ぎの手順
- 月額のサービスを計上する勘定科目
社内FAQに貼れる回答文例
【】の部分を自社の内容に書き換えて使えます。
Q. 仕事で使うネットのサービスを、会社のお金で契約したいときはどうすればいいですか?
A. 申し込む前に【申請方法】から申請してください。申請には、サービス名、使う目的、料金と支払いの周期、そのサービスに置く情報(顧客の情報や社内の資料を入れるかどうか)を書いてください。
顧客の情報や社員の個人情報を置く場合は、【情シスの窓口】の確認が必要です。承認の前に申し込まないでください。
契約は会社のメールアドレスで行い、支払いは【支払い方法】にしてください。自分のメールアドレスやカードで契約すると、異動や退職のときに引き継げません。
領収書はサービスの画面からダウンロードして、【保存先】にデータのまま保存してください。印刷した紙だけを出すことはできません。
続けて聞かれやすいこと
無料のプランなら申請しなくていいですか?
費用が出ない場合でも、会社の資料や顧客の情報を置くなら申請してもらいます。無料のまま使い始めて、あとから有料に切り替わる形のサービスもあるので、申請の対象は金額ではなく「会社の情報を置くか」で線を引くと迷いません。
自分のカードで払ってしまいました。精算できますか?
【立替の扱い】に沿って受け付けますが、アカウントの名義を会社のメールアドレスに変えてもらい、次回からの支払い方法を【支払い方法】に切り替えてもらいます。領収書は画面からダウンロードして出してもらいます。
使わなくなったサービスは、どうやってやめますか?
契約した部署の担当者に、サービスの画面から解約してもらい、【申請方法】に解約の記録を残します。年払いの途中で解約すると残りの期間分が戻らない契約もあるので、更新日の前に見直す月を決めておきます。
答えるときに間違えやすいこと
- 料金の安さだけで判断し、顧客の情報を置くサービスを情シスの確認なしで通してしまう
- 社員の個人名義のまま契約が続き、その人の退職時に解約もデータの取り出しもできなくなる
- 海外のサービスの請求書を社員に処理させ、消費税の扱いを誤ったまま計上する