人事・労務

住民税の天引き(特別徴収)について聞かれたら

2026年10月27日に内容を確認

社員からはこう聞かれます

  • 6月の給料から住民税が急に増えたんですが、何かあったんですか?
  • 入社したときは住民税が引かれていなかったのに、今年から引かれています
  • 退職したら、残りの住民税はどうなりますか?

ひと言でいうと

住民税は前年1月から12月までの所得に対してかかり、給与から天引きされる場合は6月から翌年5月までの12回に分けて引かれます。金額は市区町村が決めて会社に通知するもので、会社が計算しているわけではありません。毎月の天引き額は【給与明細システム名】の住民税の欄で確認できます。

住民税の天引きを聞いてくる社員は、手取りが先月と違うことに気づいて、会社が何か間違えたのではないかと心配しています。住民税は会社が計算するものではなく、市区町村が決めた額をそのまま引いています。この仕組みを先に伝えると、金額の交渉ではなく確認の話になります。

退職する社員の住民税の残額の扱い
退職後すぐに次の勤務先が決まっているか
  • はい
    転職先を通じて特別徴収を続ける申出を案内する
  • いいえ
    退職日は1月1日から4月30日までか
    • はい
      最後の給与や退職手当から残額を一括で引く
    • いいえ
      一括で引くか納付書で納めるかを本人に確かめる

出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)「地方税法」

答えるときに押さえること

1住民税は前年の所得にかかり、6月から翌年5月までの12回で引きます

住民税(個人住民税)の所得割は、前年1月1日から12月31日までの所得をもとに計算します(地方税法313条)。課税する市区町村は、その年の1月1日に住んでいた場所で決まります(同318条)。前年に給与の支払を受けていて、その年度の初日にも給与の支払を受けている社員の住民税は、原則として会社が給与から引いて納めます(同321条の3)。この引き方を特別徴収、本人が納付書で納める方法を普通徴収と呼びます。

市区町村は、給与を支払う会社を条例で特別徴収義務者として指定します(同321条の4)。会社は、通知された税額の12分の1を6月から翌年5月までの毎月の給与から引き、引いた月の翌月10日までに市区町村へ納めます(同321条の5)。税額が均等割額以下のときは、最初に引く月に全額を引きます。給与の支払を受ける人が常時10人未満の事業所は、市区町村長の承認を受けると、6月から11月分を12月10日まで、12月から翌年5月分を6月10日までにまとめて納められます(同321条の5の2)。

26月に天引き額が変わるのは、新しい年度の税額に切り替わるからです

市区町村は、その年度の特別徴収税額を、5月31日までに会社へ、そして会社を経由して本人へ通知します(地方税法321条の4第2項)。会社はその通知のとおりに6月分から引くので、5月と6月で金額が変わります。

「急に増えた」と言われたら、前年の収入が増えていないかを本人に確かめてもらいます。残業が多かった年、賞与が増えた年、副業の所得を申告した年は、翌年度の住民税が上がります。住民税は所得税と違って年末調整で精算しないので、給与明細の住民税の欄と所得税の欄は動き方が違います。給与明細の見方を聞かれたらもあわせて案内します。

税額は市区町村が計算しているため、会社では内訳を説明できません。本人に渡した通知書か、1月1日に住んでいた市区町村の課税の窓口を案内します。

3入社1年目には引かれず、2年目の6月から引かれ始めます

特別徴収の対象は、前年中に給与の支払を受けた人のうち、その年度の初日にも給与の支払を受けている人です(地方税法321条の3)。新卒で4月に入社した社員は前年の所得がないか少ないため、1年目は住民税が引かれないか、ごくわずかです。入社した翌年の6月から、入社した年の所得に対する住民税が引かれ始めます。入社2年目で手取りが減るのはこのためです。

転職で中途入社した社員は、前の会社の退職で普通徴収に切り替わっていることがあります。その場合は、本人が納付書で納めるか、会社が市区町村に申請して特別徴収に切り替えます。入社の手続きのときに、住民税を給与から引く扱いにするかを確かめておくと、あとから「引かれていない」と聞かれることが減ります。

4退職する月によって、残りの住民税の扱いが変わります

退職すると、その事由が発生した月の翌月以降の分を会社が引く義務はなくなります。ただし次の2つの場合は、最後に支払う給与や退職手当から残額をまとめて引きます(地方税法321条の5第2項)。

1つは、1月1日から4月30日までに退職する場合です。このときは本人の申出がなくても一括で引きます。もう1つは、6月1日から12月31日までに退職し、本人から一括で引いてほしいという申出があった場合です。どちらも、5月31日までに支払う給与や退職手当が残額を上回るときに限られます。最後の給与が少なくて足りないときは、そこから引ける額までを引きます。

一括で引かない分は、市区町村から本人に納税通知書が届き、本人が納めます。普通徴収の納期は6月・8月・10月・1月の年4回で、市区町村の条例で決まります(同320条)。退職の手続きのときに残りの住民税の扱いを伝えておくと、退職後の問い合わせが減ります。退職するときに会社へ返すものを聞かれたらの案内と同じ場面で説明できます。

5転職先で天引きを続けるには、新しい会社を通じた申出が必要です

退職後すぐに次の会社に入る場合は、天引きを切らさずに続けられます。本人が新しい勤務先を通じて、前の会社から給与の支払を受けなくなった日の属する月の翌月10日までに申出をすると、新しい勤務先が特別徴収義務者に指定されます(地方税法321条の4第5項)。給与の支払を受けなくなった日が4月中のときは、その月の30日までです。

前の会社は、給与の支払を受けなくなった人の氏名とすでに引いた額を書いた異動の届出書を、市区町村に出します(同321条の5第3項)。転職先に引き継ぐときは、この届出書に転職先を記載します。退職する社員から転職先を聞けないときは、残額は普通徴収になると伝えます。

退職する社員には、源泉徴収票が欲しいと言われたらの手続きもあわせて案内します。住民税の残額の話と源泉徴収票の交付は、どちらも退職の面談で一度に片づけられます。

自社の規程で確認すること

会社によって答えが変わる部分です。社員に答える前に確かめてください。

  • 給与明細で住民税がどの欄に出るか、毎月の天引き額をどこで確認できるか
  • 退職の手続きで、一括徴収にするか普通徴収にするかを誰がいつ本人に確かめるか
  • 中途入社した社員の住民税を特別徴収に切り替える申請の担当と期限
  • 納期の特例(年2回の納入)の承認を受けているかどうか

社内FAQに貼れる回答文例

【】の部分を自社の内容に書き換えて使えます。

回答文

Q. 給与から引かれている住民税について知りたいです。いつから、いくら引かれますか?

A. 住民税は前年1月から12月までの所得に対してかかり、6月から翌年5月までの12回に分けて給与から引きます。金額はお住まいの市区町村が決めて会社に通知するもので、会社が計算しているものではありません。毎月の天引き額は【給与明細システム名】の住民税の欄で確認できます。5月と6月で金額が変わるのは、新しい年度の税額に切り替わるためです。金額の内訳や計算の根拠は、お渡しした通知書か、1月1日に住んでいた市区町村の課税の窓口にお問い合わせください。退職する場合、1月から4月までに退職するときは残額を最後の給与から一括で引きます。6月から12月までに退職するときは、一括で引くか、市区町村から届く納付書でご自身で納めるかを選べます。転職先で天引きを続けたいときは、【退職手続きの窓口】に転職先の会社名と住所をお知らせください。

続けて聞かれやすいこと

答えるときに間違えやすいこと

  • 住民税の額は市区町村が決めるので、会社では計算の内訳を説明できないと伝えます
  • 1月1日から4月30日までに退職する社員は、本人の申出がなくても一括徴収になります
  • 転職先で天引きを続ける申出には期限があるので、退職の手続きのときに転職先を確かめます

出典

2026年10月27日時点で内容を確認しています。