退職後の健康保険の切り替えを聞かれたら

社員からはこう聞かれます
- 来月末で退職します。健康保険はそのまま使えますか?
- 退職したあとの保険は、任意継続と国民健康保険のどちらが得ですか?
- 次の会社に入るまで1か月空きます。その間の保険はどうなりますか?
ひと言でいうと
会社の健康保険の資格は退職日の翌日に失われるので、退職後は任意継続、国民健康保険、家族の被扶養者のどれかに入り直します。任意継続の申出は資格を喪失した日から20日以内、国民健康保険の届出は14日以内で、期限が違います。どれを選ぶかは本人が決めるので、会社は【退職時に渡す書類】と期限を伝えます。
社員が知りたいのは、退職したあとに医療費が3割負担のままでいられるか、そのために何をいつまでに出すかです。その裏には「手続きが遅れて保険が使えない日ができないか」「保険料がいくらになるか」という不安があります。担当者の側は、会社がどこまで手続きするのか、どの保険を選ぶよう案内してよいのかで迷います。
- はい家族の勤務先での被扶養者の届出を案内する
- いいえ退職日の前日まで継続して2か月以上の加入があるか
- はい任意継続(20日以内)と国民健康保険(14日以内)の両方を案内する
- いいえ国民健康保険の届出(14日以内)を案内する
- はい
出典:厚生労働省 法令等データベース「健康保険法」
答えるときに押さえること
1資格を失うのは退職日の翌日です
健康保険と厚生年金保険の資格喪失日は、退職日の翌日です。3月31日付けで退職するなら、資格喪失日は4月1日になります。退職日当日はまだ資格があるので、その日の受診は会社の健康保険で扱います。
会社は被保険者資格喪失届を、事実が発生してから5日以内に提出します。資格を失ったあとは、マイナ保険証の資格情報も会社の健康保険のものとしては使えません。資格確認書が交付されている場合は、会社の指示に従って返してもらいます。
医療保険に入らない期間をつくる選択肢はないので、退職後は次の3つのどれかに入り直します。本人がどれを選ぶかによって、手続きの相手と期限が変わります。
2選び方は3つあり、期限がそれぞれ違います
1つ目は、会社の健康保険を続ける任意継続です。資格を喪失した日から20日以内に、加入先(協会けんぽの都道府県支部か健康保険組合)へ申し出ます。
2つ目は、住んでいる市区町村の国民健康保険です。資格を取得したときや喪失したときから14日以内に、市区町村の国民健康保険の窓口へ届け出ます。国民健康保険法施行規則では、届け出るのは本人ではなく、その人が属する世帯の世帯主と定められています。
3つ目は、家族の健康保険の被扶養者になる方法です。手続きは家族の勤務先を通して行うので、本人が直接申し込む先はありません。
20日と14日は取り違えやすく、どちらも起算日は退職日ではなく退職日の翌日です。退職の面談では、この2つの日数と起算日をその場で伝えておきます。
3任意継続は2か月以上の加入が条件で、2年までです
任意継続被保険者になれるのは、資格を喪失した日の前日まで継続して2か月以上被保険者だった人です(健康保険法第3条第4項)。加入できる期間は、任意継続被保険者となった日から2年までです。
保険料は全額自己負担です。保険料の基になる標準報酬月額は、資格を喪失したときの標準報酬月額と、前年9月30日時点の加入先の全被保険者の標準報酬月額の平均額のうち、少ない額になります(同法第47条第1項)。給与から引かれていた額とは変わるので、金額は加入先に確かめてもらいます。
納付の期限は、その月の10日です。初めて納付すべき保険料を期日までに納めないと、任意継続被保険者にならなかったものとみなされます。その後の保険料も、期日までに納めないと資格を失います。
2年を待たずにやめたいときは、やめる旨を申し出れば、受理された月の末日が来た時点で資格を失います。次の会社に入るときも、就職した日に任意継続の資格は終わります。
4家族の被扶養者になれると、本人の保険料はかかりません
家族の健康保険の被扶養者になる道もあります。主として被保険者に生計を維持されている場合が対象で、収入の目安は、毎月の定期的な収入の合計が年間130万円以内で、かつ被保険者の収入の2分の1以下であることです。退職金のような一時的な収入は、毎月の定期的な収入には含めません。
被扶養者には本人の保険料がかからないので、収入の見込みが目安の範囲なら、まずこの方法を検討してもらいます。認定するかどうかを決めるのは家族の加入先なので、会社が「入れます」と判断することはできません。
家族が健康保険組合に入っている場合は、確かめる書類や収入の見方が組合ごとに違います。家族の勤務先か、その組合に直接確認してもらいます。
5国民健康保険の保険料は、前年の所得をもとに世帯ごとに決まります
国民健康保険の保険料の計算方法は、市区町村の条例で決まります。世帯ごとに計算し、加入する人それぞれの応益分と応能分を合わせた額になります。同じ収入でも住む市区町村で額が変わるので、金額は窓口で試算してもらいます。
倒産や解雇などで離職した人(雇用保険の特定受給資格者)と、雇い止めや正当な理由のある自己都合で離職した人(特定理由離職者)は、保険料の算定で前年の給与所得を30/100として扱う軽減があります。適用されるのは、失業時からその翌年度末までです。高額療養費の所得区分の判定でも同じ扱いになります。
この軽減は雇用保険の離職理由で決まるので、離職票の離職理由のコードが手続きに必要になります。会社都合で辞める社員には、離職票の発行時期とあわせて軽減の存在を伝えておくと、問い合わせが減ります。
自社の規程で確認すること
会社によって答えが変わる部分です。社員に答える前に確かめてください。
- 加入している健康保険が協会けんぽか健康保険組合か、任意継続の申出先
- 資格確認書や被保険者証の返却先と返却の期限
- 退職時に渡す書類(健康保険資格喪失証明書など)と、渡す時期
- 資格喪失届を出す担当と、本人へ手続きを案内する担当
- 離職票や退職証明書の発行を依頼する窓口と、発行までの日数
社内FAQに貼れる回答文例
【】の部分を自社の内容に書き換えて使えます。
Q. 退職したあと、健康保険はどうなりますか?
A. 会社の健康保険の資格は、退職日の翌日に失われます。退職後は、(1)会社の健康保険を続ける任意継続、(2)お住まいの市区町村の国民健康保険、(3)ご家族の健康保険の被扶養者のいずれかに入り直してください。任意継続は資格を喪失した日から20日以内に【加入先の名称】へ、国民健康保険は14日以内にお住まいの市区町村の窓口へ手続きが必要です。ご家族の被扶養者になる場合は、ご家族の勤務先にご相談ください。手続きに使う健康保険資格喪失証明書は、【発行の窓口】から【発行の時期】にお渡しします。【資格確認書の返却先】への返却も、【返却の期限】までにお願いします。保険料の額は、任意継続は【加入先の名称】、国民健康保険はお住まいの市区町村の窓口でご確認ください。
続けて聞かれやすいこと
退職してすぐ病院に行きたいと言われたら、どう答えますか?
先に新しい保険の手続きを済ませてもらうよう案内します。退職日の翌日からは会社の健康保険が使えないので、受診の予定が決まっているなら、任意継続か国民健康保険の手続きを急いでもらいます。手続きが済む前に受診したときの精算の扱いは、入る先の保険の窓口に確かめてもらいます。
任意継続と国民健康保険のどちらが安いか聞かれたら、どう答えますか?
会社では決められないと伝えます。任意継続の保険料は加入先、国民健康保険の保険料は市区町村の窓口で、それぞれ試算してもらえます。扶養する家族がいるかどうかや前年の所得で逆転するので、両方の額を聞いてから選んでもらいます。
退職する人の家族を、自分の健康保険の扶養に入れたいと言われたら?
在職中の社員が、退職した配偶者などを自分の被扶養者にする場合は、こちらで被扶養者の届出を受け付けます。収入の見込みと生計の維持を確かめる書類が必要になります。
詳しくは「家族を扶養に入れたいと言われたら」をご覧ください。
答えるときに間違えやすいこと
- 任意継続の20日と国民健康保険の14日を取り違えないようにします
- 期限の起算日は退職日ではなく退職日の翌日なので、退職日から数えないようにします
- どちらの保険料が安いかを会社が断定しないようにします。額は加入先と市区町村で確かめてもらいます
- 健康保険組合は要件や保険料が協会けんぽと違うので、組合の案内で確かめるよう伝えます
- 任意継続は保険料を期日までに納めないと資格を失うので、納付の期限もあわせて伝えます